潮晶石の手がかり
昼休み。
アルトは土をいじりながら、今朝の出来事をユナとカイ、そしてリオルに話していた。
「……で、図書室で走ったら、司書さんに怒られちゃって」
アルトが肩をすくめると、ユナとカイは同時に苦笑した。
「アルトらしいというか……」
「マーティンさんまで一緒に怒られるの、ちょっと面白いな」
しかし、リオルだけは目をぱちくりさせていた。
「マーティン先輩に……そんな一面があったんだね。
図書室で大声なんて、想像できないよ」
驚きと興味が入り混じった表情に、アルトは思わず笑ってしまう。
「放課後に、また調べてみようと思ってるんだ」
「じゃあ、僕も家で薬草とか、使えそうな素材がないか探してみるよ」
リオルが嬉しそうに言う。
「ありがとう、リオル」
「うん! 早速取り掛かるよ」
リオルは楽しそうに席を立ち、昼休みの残り時間を使ってメモを取り始めた。
◇
放課後。
学校の図書室には、夕方の柔らかな光が差し込んでいた。
マーティン、アルト、ユナ、カイの四人は、机いっぱいに資料を広げて調査を始める。
「潮晶石の性質……魔力の流れを安定させる……」
「洞窟の地形は……あれ、詳しく書いてないな」
「魔物の種類も曖昧だね」
ページをめくる音だけが静かに響く。
しかし、どの本にも潮晶石の詳しい情報はほとんど載っていなかった。
「資料が少ないな……」
マーティンが眉を寄せる。
「最近採れるようになったのかもしれないね」
彼はそう言いながらも、どこか嬉しそうに目を輝かせていた。
その時、カイがふと本のタイトルを見て呟いた。
「潮晶石って名前、本によって違うんじゃないか?
別名とか、古い呼び方とかさ」
「その可能性はあるな」
マーティンが頷き、ユナとアルトも納得したように顔を見合わせる。
「そういえば……ハリス叔父さん、今日はどうしたんだろう」
ユナがふと思い出したように言う。
「就活が始まって、いろんなところに顔を出してるんだ」
マーティンが本を閉じながら答えた。
「就活って?」
ユナとカイが同時に首をかしげる。
「卒業後に働く場所を探して、内定をもらうための機会のことだよ」
アルトが説明すると、二人は「へぇ……」と感心したように頷いた。
「うちは先祖代々、船に乗るか内職で服を作る仕事だから……考えたことなかったな」
ユナが照れたように笑う。
「服に関する仕事、興味あるの?」
アルトが驚いて尋ねると、ユナは少し頬を赤くした。
「うん。もともと船に乗る人たちのために服を作って売るのが実家の仕事なの。
でも、もっとたくさんの服のことを知って……船乗り以外の人にも服を作れるようになりたいなって」
「ユナなら、きっとできるよ」
「だな」
アルトとカイが笑顔で言うと、ユナは嬉しそうに目を細めた。
その様子を、マーティンはどこか微笑ましそうに見守っていた。
「そういえば……服飾でも補強のための素材があった気がする」
マーティンが思い出したように言うと、ユナの目が一気に輝いた。
「本当に!? 探してみよう!」
四人は服飾系の棚へ向かい、次々と本を手に取った。
その中で、ユナが一冊の本を引き抜く。
「これ……魔法士の服飾についての本だって」
ページをめくると、そこには――
「潮晶石の性質」
という項目があった。
「「「「あった!!」」」」
四人の声が図書室に響き渡る。
「図書館では騒がない!」
司書の鋭い叱責が飛び、四人は同時に肩をすくめた。
「す、すみません……!」
しかし、叱られながらも、四人の表情には確かな喜びが浮かんでいた。
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