材料を求めて
放課後の教室。
夕陽が差し込み、机の影が長く伸びていた。
「今日、ジャックさんたちに会いに行こうと思う」
アルトが鞄を肩にかけながら言うと、ユナが即座に手を挙げた。
「私も行くよ。材料の話、気になるし」
「俺も行く。どうせ帰り道だしな」
カイも軽く笑って同行を申し出た。
三人は連れ立って校舎を出る。
海風が吹き抜け、潮の匂いが夕暮れの街に漂っていた。
◇
冒険者ギルドは夕方で混雑していた。
依頼を終えた冒険者たちが報告に並び、受付の前には長い列ができている。
ざわめきと金属音が混ざり合い、活気に満ちた空気が漂っていた。
その中で、見慣れた二人の姿が入口から現れた。
ジャックとシルだ。
どちらも疲れた様子だが、アルトたちに気づくと笑顔を見せた。
「お、久しぶりだな」
「元気そうでよかったよ」
軽い挨拶を交わし、三人はほっと胸をなでおろした。
「今日は相談があって来ました」
アルトが切り出すと、ジャックが首を傾げる。
「相談?」
「魔力を通しやすくて、補強に使える素材を探していて……」
ジャックは腕を組み、少し考え込んだ。
その横で、シルがぽんと手を叩く。
「弓矢に使われる補強の材料とかどうかな?」
「弓矢……?」
アルトが首をかしげると、シルは説明を続けた。
「潮晶石っていう素材。海岸近くの洞窟で採れるんだ。
魔力を通しやすくて、強度も上がる。弓の補強にも使われるよ」
「潮晶石……」
アルトはその名前を繰り返し、胸の中に小さな希望が灯るのを感じた。
しかし、ジャックが表情を引き締める。
「ただし、潮晶石の洞窟は魔物が出る。
それに、あそこは冒険者と騎士団以外立ち入り禁止だ」
その言葉に、三人は一瞬言葉を失った。
アルトたちはまだ冒険者登録をしていない。
つまり、自分たちだけでは行けない場所だ。
沈黙を破ったのはカイだった。
「……一人だけ、冒険者登録してる人がいる」
その言葉に、アルトとユナが同時にカイを見る。
「誰?」
「マーティンだよ」
「マーティンだよ」
確かに、マーティンはすでに冒険者登録を済ませていると言っていた。しかし、ただでさえ義手の作成を任せているのに、さらに負担をかけるのは気が引ける。
アルトの胸に、申し訳なさと頼りたい気持ちが入り混じる。
ジャックはそんな三人の様子を見て、肩をすくめた。
「俺たちが案内するか、取ってきてもいいが……」
そう言いかけて、すぐに首を振る。
「今は討伐依頼が立て込んでいて、すぐには動けない」
忙しさが顔に出ている。
無理を言える状況ではなかった。
アルトは深く頭を下げた。
「いえ……無理は言いません。
こちらでも、その……マーティンに確認してみます。
どちらであっても、準備が整ったらお願いします」
ジャックとシルは優しく頷いた。
「わかった。落ち着いたら連絡するよ」
「素材の扱い方も教えるから、心配しないで」
ギルドを出る頃には、空はすっかり夕焼けに染まっていた。
潮風が頬を撫で、遠くで波の音が聞こえる。
「潮晶石か…そんなのあるなんて知らなかったな…。本当に使えるといいね」
ユナがつぶやく。
「うん。まずは、できることからだね」
アルトは小さく拳を握った。
カイは前を向いたまま、静かに言う。
「ハリス叔父さんにも話してみよう。
きっと、何か方法があるはずだ」
三人の影が夕陽に伸び、海岸沿いの道に重なった。
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