小さな成功
マーティンがゴミ箱から拾い上げた廃材を作業台に置くと、
アルトとユナは興味津々といった様子で覗き込んだ。
「じゃあ……まずは簡単な形から削ってみようか」
マーティンが工具を手渡す。
「わ、私が……?」
アルトは少し緊張した声を出した。
「大丈夫。失敗しても問題ない」
マーティンは落ち着いた口調で言う。
アルトは深呼吸し、工具を握りしめた。
魔力を少しだけ流し込みながら、廃材の表面を削っていく。
――ガリッ。
「あっ……」
思ったより深く削れてしまい、表面が欠けた。
「気にするな。最初はそんなものだ」
マーティンが優しくフォローする。
「じゃあ次、わたしもやってみる」
ユナが手を挙げ、工具を受け取った。
しかし――
「えいっ……あっ、欠けた」
「ユナさん、勢いが強すぎます」
「む、難しい……!」
二人の挑戦は、どれも失敗に終わった。
それでも三人は笑いながら、何度も廃材を削り続けた。
空き家には、金属を削る音と、時折上がる小さな悲鳴が響く。
「次は回路を刻んでみよう」
マーティンが細い工具を取り出す。
「えっ、これ私たちがやるんですか」
「もちろん。練習だからな」
アルトは慎重に、慎重に線を刻んでいく。
しかし線は歪み、魔力を流しても反応しない。
「また失敗……」
「気にしないで。回路は難しいんだ」
ユナも挑戦するが、やはりうまくいかない。
何度も、何度も失敗が続いた。
そのときだった。
「……あれ?」
アルトが刻んだ回路が、ふっと淡い光を放った。
「えっ……光った?」
ユナが目を丸くする。
マーティンが近づき、回路をじっと見つめた。
「……これは……」
彼の声がわずかに震えた。
回路は細く、繊細で、驚くほど緻密だった。
流れる魔力は弱い。
しかし、線の精度は――
「アルト、これ……どうやって刻んだ?」
「え、えっと……ただ、丁寧に……」
アルトは自分でも何が起きたのかわからず戸惑っている。
「偶然かもしれないが……これは相当な精度だ」
マーティンは真剣な表情で回路を見つめた。
「すごいよアルト!」
ユナが嬉しそうに肩を叩く。
「い、いや、たまたまだよ……!」
アルトは真っ赤になって手を振った。
マーティンはしばらく黙っていたが、
やがて小さく息をつき、工具を片付け始めた。
「……今日はここまでにしよう。
だが、アルト。
その“たまたま”は、覚えておいた方がいい」
「えっ……?」
「後で必ず役に立つ」
マーティンは何がわかっているのだろうか?
疑問に思いながらもアルトは静かに片付けを始めた。




