鍛冶屋の答え
翌日、アルトはハリスとマーティンの二人とともに鍛冶屋へ向かっていた。
ラピスはまだ長距離の移動が難しいため、今日は家で休んでいる。
「……素材、やっぱり高騰してるんですよね」
歩きながら、アルトが不安そうに呟く。
「そうだな。だが――」
マーティンは淡々と続ける。
「情報を得るだけでも前進だ。何も知らないまま悩むよりはいい」
「……はい」
アルトは胸の前で材料リストを握りしめ、深呼吸した。
◇
鍛冶屋の前に着くと、店主がちょうど店の奥から出てきた。
アルトを見るなり、目を丸くする。
「おう、坊主……また来たのか」
「坊主じゃなくて嬢ちゃんだな」
ハリスが笑いながらアルトの方に向いた。
「嬢ちゃん…?そうだったのか。悪い悪い」
店主は頭をかきながら、気まずそうに笑った。
「今日はどうした?」
アルトは材料リストを差し出し、まっすぐ店主を見上げた。
「義手義足の改良に必要な金属について、教えてほしいんです」
「ほう……義手義足か」
店主は腕を組み、リストをざっと目で追った。
「魔力耐性の高い金属か……この間も言ったが、今は手に入りづらいぞ」
「やっぱり……」
アルトが小さく呟くと、店主は重い口を開いた。
「搬入路にモンスターが出てから少し経ったがまだ討伐が終わってなくてな。
護衛を雇わねぇと運べねぇから、相変わらずコストが跳ね上がってる。
それに、モンスターの影響で採掘量自体も減ってるらしい。
商人どもは危険を避けて別ルートに回ってるから、余計に物が来ねぇ」
「そんなに……」
ハリスは思わず息を呑んだ。
「素材が足りねぇのは王都全体の問題だ。」
店主は断言するように言った。
アルトは少しだけ肩の力を抜いた。
「で、どうするかだが……」
店主は指を折りながら、いくつかの案を挙げていく。
「まず一つ。別の街から取り寄せる方法だ。ただし高ぇし、時間もかかる」
「……ですよね」
「二つ目は、冒険者ギルドに依頼することだな。モンスター討伐と素材採取をセットで頼む。もちろん依頼料は必要だ」
マーティンが「まあ妥当だな」と頷く。
「三つ目。代替素材を使う方法だ。魔力耐性は落ちるが、試作には使える」
「試作段階なら十分だ」
マーティンが静かに言った。
「最後に……」
店主は店の奥をちらりと見た。
「俺の隠し在庫だ。少量だけ残ってる。ただし高価だし、お前らの事情次第ってところだな」
アルトはしばらく考え、そして顔を上げた。
「……代替素材で、試作してみたいです。まずは形にしてみないと、何も始まらないので」
「いい判断だ」
マーティンが頷く。
「回路設計を調整すれば、代替素材でも十分使える」
「よし、まずは試作品だな!」
ハリスが楽しそうに笑った。
店主も口元を緩める。
「やる気があるなら協力してやるよ。必要な素材、まとめておいてやる」
「ありがとうございます!」
アルトは深く頭を下げた。
本作をお読みいただきありがとうございます。
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