図書館の机で
鍛冶屋を出ると、夕方の風が三人の頬を撫でた。
アルトは胸の前で材料リストを抱え、ほっとしたように息をつく。
「代替素材でも十分だろ」
ハリスが明るい声で言う。
「問題は回路設計だ」
マーティンは冷静に続けた。
「帰ったら図面を描き直す」
「俺も手伝おう」
ハリスは迷いなく言った。
「私にもできることあるかな、マーティン」
その言葉に、マーティンはわずかに目を細める。
「では、明日高等部の図書館に来てほしい。そこで図面をいくつか書き出そうと思う。材料の収集のリストも作成したい」
アルトは「とても頼もしいです」と笑い、三人は並んで歩き出した。
◇
翌日。
アルトは高等部の図書館の扉をそっと開けた。
静かな空気の中、紙をめくる音とペンの走る音だけが響いている。
奥の机では、マーティンとハリスが頭を突き合わせて図面を書いていた。
マーティンは真剣な表情で線を引き、ハリスは横から覗き込みながら何か意見を言っている。
「来たか、アルト」
マーティンが顔を上げ、手元の図面を広げた。
「代替素材を使う場合、魔力の流れ方が変わる」
図面には複雑な線がいくつも描かれている。
「だから回路の形を少し変える必要がある」
「ここをこうすると……魔力が安定するんですか?」
アルトは指先で図面をなぞりながら尋ねる。
「そうだ。素材の特性に合わせて調整する」
マーティンは淡々と説明を続ける。
アルトは真剣に聞き入り、時折質問を挟む。
ハリスは「難しい話だな」と言いながらも、どこか楽しそうに答える。
説明が一段落すると、マーティンは図面をまとめて言った。
「明日から試作に取りかかる」
「はい。素材の整理、私がやっておきます」
アルトは机に材料リストを広げ、必要なものを一つずつ確認し始めた。
図書館の静けさの中で、三人の作業音だけが淡々と響いていた。
試作に向けて、確かな準備が進んでいく。
「そういえば、試作はどこでやるんでしょうか?」
「廃部になった錬金術部の部屋を借りようと思っている」
「!?」




