最初の壁
ハリスが遅れてやってきた。
アルトの手にある材料リストを見て苦笑した。
「改めて見ると、量が多いな。でも手に入らない素材も結構あるからな。
これとか結構レアだぞ。魔力耐性の高い金属なんて、普通の店じゃまず見ねぇ」
「全部揃える必要はない」
マーティンが淡々と補足する。
「優先順位を決めるべきだ。必要最低限の素材から手をつける」
「優先順位……」
アルトは紙束を見つめる。
「どれが最優先なんですか?」
「魔力耐性の高い金属だな」
マーティンは迷いなく答えた。
「回路を複雑化させるなら、まずは土台となる素材が必要だ。
耐性が低い金属では、魔力の負荷に耐えられない」
「なるほど……」
アルトが頷くと、ハリスが口を挟んだ。
「鍛治屋に聞いてみるのも手だな。
あいつら、素材の流通には詳しいし、在庫が残ってる可能性もある」
「鍛治屋……」
その言葉に、アルトはふと記憶を辿った。
自分の探検を直してもらった、あの鍛冶屋の店主。
頑固そうだが腕は確かで、話してみれば悪い人ではなかった。
しかし同時に、店主が言っていた言葉も思い出す。
『モンスターが搬入路に出てきてな。素材が全然届かねぇんだよ。
だから値段も上がっちまってる』
その時の苦い表情が脳裏に浮かび、アルトは思わず顔を顰めた。
「……どうした?」
ハリスが気づいて覗き込む。
「いえ……。
この前、鍛冶屋さんが言っていたんです。
モンスターのせいで素材が手に入らなくて、値段がすごく上がっているって」
「なるほどな」
ハリスが腕を組む。
「確かに最近は魔物の出現が増えてる。
素材の流通が止まってるって話は聞くな」
「魔力耐性の高い金属なら、なおさらだ」
マーティンが静かに頷く。
「希少な上に需要も高い。値段が上がるのは当然だ」
「……そうですよね」
アルトは紙束を見つめ、少しだけ肩を落とした。
「そういえばそうだったな」
ハリスが腕を組む。
そんなアルトの肩を、ハリスが軽く叩いた。
「まあ、落ち込むなって。
鍛冶屋に行って話を聞くだけならタダだろ?
代替素材があるかもしれないし、在庫が残ってる可能性だってある」
「それに、鍛冶屋は素材の入手ルートを知っている。
直接買うより、情報を得る方が先だ」
マーティンが冷静に補足する。
「……そうですね。一度、相談してみます」
アルトが顔を上げると、ハリスがにっと笑った。
「よし、その意気だ。鍛冶屋に行くなら、俺たちもついていってやるよ。どうせ暇だしな」
「伯父さんは暇ではないだろう」
マーティンが呆れたように言う。
「細けぇことはいいんだよ」
そんな二人のやり取りに、アルトは思わず笑ってしまった。
「……ありがとうございます。ラピスさんのためにも、できることをやってみます」
その言葉に、マーティンは静かに頷き、ハリスは「任せとけ」と胸を叩いた。
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