ギルド長への報告
夕暮れの王都は、戦いの喧騒とは無縁の穏やかさを取り戻していた。
教会を後にした教官は、少し重い足取りでギルドへ向かっていた。
ワイバーンの咆哮がまだ耳の奥に残っている。
ギルドの扉を押し開けると、依頼を受けに来た冒険者たちの声が響いていた。
受付嬢が教官の姿に気づき、軽く会釈する。
「お疲れさまです。ギルド長がお待ちです」
案内され、教官はギルド長室の扉をノックした。
「入れ」
低く落ち着いた声が返ってくる。
扉を開けると、壮年のギルド長が机に向かい、副ギルド長が書類を整理していた。
教官は深く頭を下げる。
「本日の冒険者テストについて、報告に参りました」
「聞こう」
ギルド長の促しに、教官は静かに口を開いた。
「……試験中、想定外の事態が発生しました。
本来、安全区域であるはずの森に、ワイバーンが出現しました」
副ギルド長の手が止まる。
「ワイバーン? あの区域に出るはずがないでしょう。いや、報告は受けていました。まさか王都の近くまで…?」
「はい。私も驚きました。参加者に負傷者が出たため、試験は中止とし、全員を教会へ退避させました」
ギルド長は眉をひそめ、腕を組んだ。
「最近、各地で魔物の移動が不安定だという報告は受けているが……まさか早速ワイバーンとはな」
副ギルド長がメモを取りながら言う。
「調査班に回しましょう。原因が自然かどうか、確認が必要ですね」
「お願いします」
教官は深く頷いた。
そして、少し言いにくそうに続ける。
「……それと、今回の参加者の中に、将来有望と思われる若者が二人おりました」
ギルド長が興味深そうに視線を向ける。
「ほう。どんな者たちだ?」
「片方は、地方から出てきたようなまだ小さい子供でした。もう片方は、あのウェイメス家の者です。ウェイメスは魔法がかなり洗練されており、両者ともに実戦での判断力と連携が優れていました。ワイバーン出現時も、冷静に対処していました」
副ギルド長が微笑を浮かべる。
「ウェイメス…?ああ、きっと魔法省との橋渡しになるための登録でしょう。小さい子供の方も、地方から出てきたなら、技術が優れていても珍しくありません。それに若い芽は大切にしないといけないですからね。正式登録の際に改めて確認しましょう」
「はい。彼らはきっと、ギルドの力になると思います」
教官の言葉に、ギルド長も静かに頷いた。
「分かった。ワイバーンの件は調査班へ。試験は後日改めて実施する。」
「承知しました」
教官は深く礼をして部屋を後にした。
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