リオルの従者視点
アルト、リオル、そしてリオルの従者が長屋へ戻ってきた。
薬草の本を見せるためだ。
アルトが本棚から一冊取り出し、リオルに手渡す。
リオルは表紙をめくり──裏表紙の紋章に気づいた。
「……これ、貴族家の紋章じゃないか?」
アルトは淡々と答える。
「母が地方の貴族だったそうみたい。
どういう家かは知らないが、学費は支援してもらっているの。
……それで、あとは自分で採取と狩猟をして暮らしてー」
従者が、信じられないものを見るような顔をした。
「……狩猟を……お一人で?」
アルトは首を傾げた。
「はい。普通ですよ?」
普通ではない。
従者は心の中で叫んだ。
リオルは興味深そうに身を乗り出す。
「狩猟って、どんな感じなんだい?」
アルトは押し入れから袋を取り出し、中身を広げた。
綺麗に剥がれた毛皮が数枚。
「こちらは昨日の森で採れたもの」
「ひ、ひえっ……!」
リオルが情けない声を上げた。
従者は毛皮を手に取り、目を見開く。
(……なめしも丁寧で、傷も少ない……子どもの技術とは思えません……)
リオルは震える声で尋ねた。
「これ……冒険者ギルドに卸しているのかい?」
アルトは首を横に振る。
「冒険者ギルド……?近所の人と物々交換しているだけだよ。」
リオルと従者が固まった。
「……冒険者ギルドを、知らないのかい?」
「ええ。なんでしょう、冒険者ギルド?とは」
裏庭での“教会ショック”に続き、
リオルと従者は再び頭を抱えた。
「アルト……君の知識の偏り、すごいね……」
従者も呆然と呟く。
(……この子、本当に一人で生きてきたんだな……)
アルトは首を傾げたまま、
二人の反応を不思議そうに見つめていた。
「……アルト、本当に知らないのかい?」
「ええ」
リオルは額に手を当て、深く息を吐いた。
「冒険者ギルドっていうのはね……魔物の討伐、素材の買い取り、依頼の仲介……
そういう“冒険者”たちの拠点なんだよ」
従者も補足する。
「毛皮や牙、薬草などの素材は、ギルドに持っていけば正式に買い取ってもらえます。
物々交換より、ずっと高値で」
アルトは瞬きをした。
「……そうなのですか」
「そうなんだよ!」
リオルが思わず声を上げた。
「むしろ、君みたいに狩猟ができて、薬草の知識があって、素材を綺麗に処理できる子なんて……ギルドでは引っ張りだこだよ!きっと!」
従者も頷く。
「毛皮の処理技術だけでも、初等部の子どもが持つレベルではありません。
ギルドに登録すれば、生活はもっと楽になりますよ」
アルトは少し考えた。
「……冒険者ギルドは、危険ではないのですか?」
リオルは苦笑した。
「危険な依頼もあるけど、素材の売買だけなら安全だよ。
僕も薬草等で依頼出したことあるよ。
登録だけしておけば、君の生活はもっと安定するはずだ」
従者がぽつりと心の中で呟く。
(……この子、どれだけ一人で生きてきたんだ……)
アルトは二人の反応を不思議そうに見つめた。
「……では、今度行ってみます」
リオルは嬉しそうに笑った。
「うん。僕も一緒に行くよ。
君一人じゃ、また何か“知らない常識”で困りそうだからね」
従者も苦笑しながら頷いた。
アルトは内心、リオルの言葉に首を傾げながらも、二人の言葉を静かに受け止めていた。
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