この世界、普通じゃない?
翌日の昼休み。
裏庭は、いつの間にか防災訓練リーダーたちの憩いの場になっていた。
木陰に座る者、草の上に寝転ぶ者、それぞれが思い思いに過ごしている。
アルトは、リオルの隣に腰を下ろした。
「……相談があるの」
リオルは本を閉じ、顔を上げた。
「どうしたんだい?」
アルトは淡々と話し始めた。
「昨日、人を……救助しました。
手足がなくて、ポーションも切れてきていて……
義手と義足が必要だと思うんです」
リーダーたちが一斉にざわついた。
「手足が……?」
「ポーション切れ……?」
「え、そんな状況で助けたの……?」
リオルは少し考え、さらりと言った。
「教会に連れて行けばいいんじゃないかな」
アルトは固まった。
「……教会に行って、どうするんですか?」
裏庭が一瞬静まり返る。
マーティンが目を丸くした。
「えっ……治療してもらうんだよ?
教会の治癒は強力だ。体力も怪我もすぐ回復する」
「義手や義足も、教会で支給されることがあるよ」
と高等部のリーダーが補足する。
アルトは本気で驚いた顔をした。
「……教会って、お祈りの場じゃないんですか?」
リーダーたちが一斉に吹き出した。
「いやいやいや!」
「お祈りもするけど、教会に行く人たちにとっては治療の方がメインだよ!」
「知らなかったの……?」
リオルは笑いながら言った。
「アルトは、家のポーションだけで治療してたのかい?」
「いえ。ポーションの他に、家にあった薬草の本をもとに……」
リオルの目が輝いた。
「薬草の知識があるのかい?
それはすごいよ。僕、薬草の治療に興味があってね。
必要な薬草があったら、ぜひ教えてほしい」
マーティンも興味深そうに聞いてくる。
「薬草の知識、どこで身につけたんだ?」
「家にある本で身につけまし……身につけたの」
アルトは少し考え、リオルに向き直った。
「……見てみたい?」
リオルは即答した。
「見たい」
「じゃあ、今度持ってきます」
その瞬間、マーティンが慌てて手を上げた。
「待て。家にある物は財産ということになる。
そんな簡単に他人に見せていいものじゃないぞ」
アルトは首を傾げた。
「お下がりなので……気にしません。
それに、王都の郊外で採れる薬草で作れる、基本的なものしか書いていません」
リオルは目を輝かせながら言った。
「じゃあ、こうしよう。
救助した人を教会に連れていくのを手伝う。費用も僕が持つ。
その代わり──本を見せてほしい」
アルトは迷わず頷いた。
「……構わない。承知したよ。というかそんな条件でいいの?」
「もちろんだよ」
リーダーたちは呆れたようにため息をついた。
「いいのかよ……」
「アルト、警戒心なさすぎ……」
「まあ、リオルなら大丈夫か……?」
リオルは微笑んだ。
「じゃあ放課後、迎えに行くよ」
アルトは静かに頷いた。




