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森の奥で出会ったもの

王都から少し離れた高原は、風がよく通る。

草が揺れ、遠くには森の影が見えた。

アルトは、腰に弓矢とナイフを帯びていた。

背中には小さなリュック。

素材を入れるための袋がいくつも括りつけてある。

(……薬草、魔物の皮、牙。

 全部そろえれば、ナイフを打ち直せる)

足元の草を踏みしめながら、アルトは森へ向かって歩き出した。

森の入口は薄暗く、ひんやりとしている。

その中で──気配が動いた。

「……来た」

狼の姿をしたモンスターが四体。

低く唸りながら、アルトを囲むように広がった。

一体が飛びかかってくる。

アルトは一歩、横へ滑るように避けた。

その瞬間、空中でナイフを抜き、リンゴの皮を剥くような滑らかな動きで毛皮を切り裂いた。

着地と同時に、ナイフを逆手に持ち替え──投げる。

同時に弓を引き、三本の矢を放つ。

矢は三体の眉間に正確に突き刺さり、ナイフは一体の首元に吸い込まれるように刺さった。

刃が通り、首が落ちる。

静寂。

アルトはすぐに周囲を見渡し、気配を探る。

(……大丈夫。まだ来ない)

倒れたモンスターから素材を採取していく。

毛皮、牙、爪。

必要なものを手際よく袋に入れる。

ふと、手元を見る。

ナイフが血で濡れていた。

自分の手も、赤く染まっている。

「……」

呼吸が浅くなる。

胸が締めつけられるような感覚。

冷たい汗が背中を伝った。

(……大丈夫。これは、人の血じゃない。)

そう言い聞かせながら、アルトは森を後にした。



時間が経ち、川の音が聞こえてきた。

アルトは膝をつき、手を水に浸す。

冷たい水で、何度も何度も手を洗う。

血が落ちるたび、川面に赤い筋が広がった。

ナイフも丁寧に洗い、布で拭き取る。


その時──

グルゥゥ……

カチ……カチ……

低い唸り声と、金属が石に当たるような音。

アルトはすぐに身構えた。

弓を握り、音のする方へ慎重に近づく。

(……モンスター?)

草をかき分け、沢を覗き込んだ。

そこにいたのは──

赤黒いものに覆われた“人”だった。

ぐう……と苦しげな声。

破壊された鎧が石に当たり、カチ……カチ……と音を立てている。

アルトは息を呑んだ。

慎重に沢へ降り、男性の体を引き上げる。

右腕がなかった。

右足も、膝から先がなかった。

赤黒いのは、血だった。

アルトはその場に膝をつき、

男性の顔をじっと見つめた。

呼吸が浅くなる。

胸が痛いほど締めつけられる。

(……まただ)

血の匂い。

欠損した四肢。

助けを求める声。

過去の記憶が、静かに蘇る。

アルトは震える手で、男性の脈を確かめた。

まだ、生きている。

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