表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/31

薄暗い学園長室で 2

訓練が終わった直後、

リーダーたちと初等部の担任、リーダー会議に参加した先生は、学園長室へ呼び出された。

重厚な扉が閉まると、室内の空気は一気に重くなる。

学園長は机の前に座り、深いため息をついた。

「……さて。

今回の“火災再現訓練”について、説明してもらおうか」

机の上には、昨日のリーダー会議で提出した資料と──

担当教師のサイン入りの計画書が置かれていた。

初等部の先生は青ざめ、教頭は頭を抱えている。サインした先生は冷や汗をかいている。

「まさか……本当にやるとは……」

「いや、サインは……したが……」

学園長の視線が、アルトに向けられた。

「アルト・オフィーリウス。資料を作成したのは君だね。

君は、なぜこんな大掛かりな訓練を?」

アルトは一歩前に出て、静かに言った。

「むしゃくしゃしてやりました」

室内の空気が止まった。

「む、むしゃくしゃ……?」

学園長は資料を落としてしまった。

初等部の先生が崩れ落ちそうになる。

教頭は頭を抱えたまま固まった。

リーダーたちは笑いを堪えている。

「反省はしていますが、後悔はしていません。」

だが、アルトは淡々と続けた。

「形だけの訓練では意味がありません。“本物に近い状況”でなければ、命は守れません」

学園長は眉をひそめたが、何も言わない。

その代わり、マーティンが口を開いた。

「学園長。今回の訓練で、はっきりしたことがあります」

「……何だね?」

「先生が逃げると、生徒は混乱する。

実際、中等部と高等部で“逃げた教師たち”がいました」

先生たちが「ひっ」と声を上げた。

教頭は腰が抜けてしまった。

マーティンは続ける。

「しかし、リーダーたちは冷静に動き、全員を避難させることができました。

これは“成果”です」

中等部のリーダーも頷く。

「先生が逃げたら、誰が生徒を守るんですか。

今回の訓練で、それがよくわかりました」

他の高等部のリーダーも続ける。

「逃げた先生が悪いとは言いません。でも、現実として“逃げる人”はいます。

だからこそ、訓練が必要なんです」

学園長は腕を組み、深く息を吐いた。

「……なるほど。君たちの言い分は理解した」

そして、静かに告げた。

「今回の件は……口頭注意で済ませよう」

初等部の先生が安堵の息を漏らす。

教頭は「助かった……」と呟いた。

学園長は続けた。

「ただし──

今後は必ず教師側と連携し、勝手に規模を拡大しないこと。いいね?」

「はい」

リーダーたちは一斉に頭を下げた。

「では、退出してよろしい」

リーダーたちは礼をして、学園長室を後にした。



扉が閉まると、学園長は深く椅子にもたれかかった。

「……どうしたものか」

教頭が弱々しく言う。

「生徒の前で逃げた先生がいる……

これでは信頼が……」

学園長は額を押さえた。

「生徒からの信頼がなくなってしまっている……

これでは、我が学園の信頼がなくなってしまう。どうすればいいのか……」

静かな学園長室に、重い沈黙が落ちた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ