第41話 王都の帰還と決定的な影
第41話をお届けします。
王都への帰還と、上層部の冷たい反応を描きました。
ディオンとアリアの離れ離れになった心の距離が、徐々に強調されています。
シリアスな心理描写をお楽しみください。
王都セルフィアの白い城壁が、再び一行の前に姿を現した。
東部国境の調査任務を終え、勇者パーティは疲れた体を引きずりながら帰還した。表向きは成功だったが、空気は重く、誰もが言葉少なだった。
正門をくぐると、民衆の歓声は以前よりさらに控えめになっていた。
「英雄ディオン卿……お帰りなさい」「新しい聖女様も……」
しかし、熱狂は薄れ、視線には戸惑いや好奇の色が混じっていた。聖女アリアの浄化の力が失われたという噂は、すでに王都全体に広がっていた。
ディオンは馬に乗り、黒いマントを翻しながら無表情で進んでいた。灰色の瞳は民衆の視線を冷たく受け止めていた。
セレナは馬車に乗り、明るい金髪を聖女衣装のフードで軽く覆っていた。青い瞳は少し緊張しているが、掌から柔らかな黄金の光を灯して民衆に微笑みかけていた。
大聖堂前の広場に到着すると、高位司教ガルドと数名の聖職者、王国貴族たちが待っていた。
ガルド司教はいつもの穏やかな微笑みを浮かべ、前に出た。
「英雄ディオン・ヴァルデン卿、聖女セレナ殿。お帰りなさい。東部国境での任務、ご苦労様でした。報告を受けています。瘴気の発生を抑えたとのこと……まさに希望の光です」
その言葉は優しかったが、目には計算高い光が宿っていた。
セレナは馬車から降り、控えめに頭を下げた。
「司教様、私にできる限りのことをいたしました。英雄卿のお役に立てて光栄です」
ディオンは無言でガルドを灰色の瞳でじっと見つめ、淡々と告げた。
「……任務は完了した。セレナの光で瘴気を抑えた。アリアはもういない。新しい聖女で満足か?」
ガルドは微笑みを崩さず、静かに答えた。
「英雄卿。セレナの浄化の力は強い。君の呪いも、これで再び抑えられるはずだ。アリアは療養中だ。彼女のことは心配しなくていい」
その言葉に、ディオンの胸に鋭い痛みが走った。
夜、大聖堂の控室。
ディオンは一人で窓辺に立ち、遠くの教会療養施設の方角を見つめていた。
セレナが部屋に入り、そっと声をかけた。
「英雄卿……一人でいるより、私と話しましょう。聖女として、貴方様の心の負担も軽くしたいんです」
ディオンは振り返らず、淡々と答えた。
「……お前は、アリアの代わりにはなれない。アリアは、俺の呪いを抑えるために自分の希望まで削っていた。お前はまだ、それを知らない」
セレナは少し傷ついた顔をしたが、微笑んだ。
「私は、頑張ります。英雄卿が一人で苦しまないように……」
ディオンは灰色の瞳を閉じ、胸の中でアリアの顔を思い浮かべた。
(アリア……お前は今、教会でどうしている? 俺はまた、一人になった。お前がいないこの孤独が……一番の呪いだ)
一方、教会の療養施設。
アリアは小さな部屋の窓辺に座り、銀髪を乱したまま夜空を見つめていた。
彼女は静かに呟いた。
「ディオン様……新しい聖女様と一緒に、王都に帰ってきているのでしょうか。私がいなくても……無事でいてください……私の光はもうないけど……心は、いつも貴方様の側にあります」
王都の夜は華やかだったが、二人の胸には、すでに深い絶望の影が落ち始めていた。
新しい聖女セレナの光は明るく輝いていたが、
ディオンの心に残るアリアの影は、ますます濃くなっていた。
救世主として期待されるディオンは、
これから訪れる最大の絶望と、必然の裏切りを、一人で迎えようとしていた。
第41話、いかがでしたでしょうか。
セレナとの任務終了と、王都帰還後のシーンを中心に書きました。
ディオンの孤独とアリアへの想いが、物語をさらに深めています。
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次回もどうぞよろしくお願いいたします。




