第25話 教会の決定と別れの予感
第25話をお届けします。
王都帰還後の教会の決定と、二人の別れの予感を描きました。
上層部の冷たい思惑がはっきり見え始め、アリアの立場が危うくなっています。
これから物語は、ディオン一人での苦闘と、最大の裏切りへ向かいます。
シリアスな心理描写をお楽しみください。
王都セルフィア到着から二日後。
大聖堂の奥深く、浄化の間に再びディオンとアリアが呼び出されていた。
白い大理石の部屋に、高位司教ガルドと数名の上級聖職者、王国騎士団長レオン・ヴァイスが揃っていた。空気は重く、以前のような温かみは一切感じられなかった。
ガルド司教はいつもの穏やかな微笑みを浮かべながら、二人を見つめた。
「英雄ディオン・ヴァルデン卿、聖女アリア・ルミナ殿。灰の山脈での任務、ご苦労様でした。しかし……報告を受けたところ、アリアの浄化の力が完全に失われたとのこと。本当ですか?」
アリアは膝を折って頭を下げ、弱々しく答えた。
「はい……申し訳ありません。灰の山脈での戦いで……最後の力を振り絞りましたが、もう……光は出ません」
ガルドの目がわずかに細くなった。
「それは残念だ。アリアよ、君は聖女として多くの期待を背負っていた。しかし、浄化の力が失われた今、君の役割は大きく変わる。教会としては、君を『療養』という名目で一時的に預かることにした」
アリアの体が小さく震えた。
「司教様……私は、まだ……ディオン様の側に……」
ガルドは優しく、しかしはっきりと言った。
「アリア。君の献身は評価している。しかし、現実を見なさい。英雄卿の呪いは日増しに強まっている。浄化なしでは、君はただの負担になる。新しい聖女を急ぎで選定する。君は教会の施設で静養しなさい。それが、君のためでもある」
レオン騎士団長が横から補足した。
「英雄卿、君の負担も大きい。新しい聖女が来るまで、君一人で任務をこなしてもらうことになる。聖女アリアは……一旦、離れた方が良い」
ディオンは灰色の瞳でガルドとレオンを冷たく見つめ、淡々と告げた。
「……お前たちは、とうとう本性を現したな。アリアを『浄化の道具』としか見ていなかった。光が消えた途端に、用済み扱いか。俺の呪いのせいで彼女がここまで追い詰められたというのに……」
ガルドは微笑みを崩さず、静かに返した。
「英雄卿。君もわかっているはずだ。私たちは皆、王国と教会のために最善を尽くしている。希望の光として、二人は民衆の期待を背負っている。その期待を裏切るようなことは、許されない。新しい聖女が来れば、君の呪いも再び抑えられるだろう」
アリアはディオンの袖を弱々しく握り、震える声で言った。
「ディオン様……私……教会に戻されるのでしょうか……貴方様の側にいられなくなる……」
ディオンは彼女の手をそっと握り返し、低い声で答えた。
「ああ……お前はもう、十分にやった。アリア。光が消えた今、俺の呪いはさらに強まっている。お前をこれ以上危険に晒すわけにはいかない」
その夜、大聖堂の控室で、二人は最後の短い時間を過ごしていた。
アリアはベッドに座り、ディオンがその隣に立っていた。
アリアは弱々しく言った。
「ディオン様……私、教会に戻されます。新しい聖女が来るまで……貴方様は一人で……」
ディオンは灰色の瞳を伏せ、淡々と答えた。
「……そうだ。お前は教会で休養を取れ。アリア、お前は本当に優しすぎる。俺の側にいれば、必ず不幸が訪れる。お前を守りたいのに……それが一番残酷な呪いだ」
アリアはディオンの手に自分の額を寄せ、震える声で言った。
「私は……貴方様の側にいたいんです。たとえ道具としてしか扱われなくても……貴方様と一緒にいたい……離れたくない……」
ディオンは彼女の銀髪をそっと撫で、静かに言った。
「お前がそう言うたび、俺は怖くなる。アリア……お前の決意が、いつか最大の裏切りを生むことを、俺は知っている」
部屋に重い沈黙が落ちた。
王都の夜は華やかだったが、二人の胸には、すでに深い絶望の影が落ち始めていた。
聖女アリアの力が完全に失われた今、
教会と王国の上層部は、新しい「道具」を用意し始めていた。
救世主として期待される二人は、
これから訪れる最大の裏切りと、必然の絶望を、静かに迎えようとしていた。
第25話、いかがでしたでしょうか。
教会の決定により、アリアの立場が明確に変わり始めました。
ディオンとアリアの絆が試され、物語はクライマックスに向かっています。
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次回もどうぞよろしくお願いいたします。




