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呪われた英雄と裏切りの聖女  作者: 寝不足魔王


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第24話 王都帰還と冷たい迎え

第24話をお届けします。


王都への帰還と、上層部の冷たい反応を描きました。

アリアの力の喪失が、物語に大きな影響を与え始めています。


パーティ内の亀裂と教会の思惑が、徐々に明確になってきました。

シリアスな展開をお楽しみください。

王都セルフィアの白い城壁が、再び一行の前に姿を現した。


灰の山脈での任務を終え、勇者パーティは疲れた体を引きずりながら帰還した。表向きは勝利の凱旋だったが、空気は重く、誰もが言葉少なだった。


正門をくぐると、民衆の歓声は以前より控えめになっていた。


「英雄ディオン卿……お帰りなさい」「聖女様も……無事でよかった……」


しかし、熱狂は薄れ、視線には戸惑いや好奇の色が混じっていた。聖女の浄化の力が使えなくなったという噂が、少しずつ広がり始めていた。


アリアは馬車の中から弱々しく手を振り、銀髪を風に揺らした。青みがかった金色の瞳は輝きを失い、顔色は極めて悪い。


ディオンは馬に乗り、黒いマントを翻しながら無表情で進んでいた。灰色の瞳は民衆の視線を冷たく受け止めていた。


大聖堂前の広場に到着すると、高位司教ガルドと数名の聖職者、王国貴族たちが待っていた。


ガルド司教はいつもの穏やかな微笑みを浮かべ、前に出た。


「英雄ディオン・ヴァルデン卿、聖女アリア・ルミナ殿。お帰りなさい。灰の山脈での任務、ご苦労様でした。報告を受けています。魔王の眷属を大きく後退させたとのこと……まさに希望の光です」


その言葉は優しかったが、目には計算高い光が宿っていた。


アリアは馬車から降り、膝を折って頭を下げた。声がかすかに震えている。


「司教様……私にできる限りのことを……いたしました」


しかし、ガルドの視線はアリアの顔色と、彼女から感じられる力の欠如を素早く捉えていた。


「アリアよ……浄化の力は、どうかな? 灰の山脈での戦いで、かなり消耗したようだね」


アリアは唇を噛み、弱々しく答えた。


「申し訳ありません……私の力は……もう、ほとんど使えなくなってしまいました……」


その瞬間、周囲の空気が変わった。


ガルド司教の微笑みがわずかに固くなり、レオン騎士団長がため息をついた。


貴族の一人が小声で呟いた。


「聖女の力が……失われたのか?」


ディオンは灰色の瞳でガルドをじっと見つめ、淡々と告げた。


「……任務は完了した。俺の力で眷属を退けた。アリアはもう、浄化の力を使えない。彼女をこれ以上巻き込むな」


ガルドは穏やかな声で答えたが、目は冷たかった。


「英雄卿、それは残念だ。聖女アリアの浄化は、君の呪いを抑える重要な鍵だった。しかし……力が失われたのであれば、教会として新たな聖女の選定を急がなければならない。君の呪いは強まり続けているようだね」


アリアの体が小さく震えた。


「司教様……私は、まだ……ディオン様の側に……」


ガルドは優しく、しかしはっきりと言った。


「アリアよ。君の献身は立派だ。しかし、聖女として君の役割は浄化の力にある。力が失われた今、君は休息を取るべきだ。教会で療養しなさい」


レオン騎士団長も同意するように頷いた。


「英雄卿、君の負担も大きい。新しい聖女をすぐに手配する。聖女アリアは……一旦、教会に戻した方が良い」


ディオンは低く、抑揚の少ない声で言った。


「お前たちは、アリアを『浄化の道具』としか見ていないのか。光が消えた途端に、用済み扱いか。俺の呪いのせいで彼女がここまで追い詰められたというのに……」


ガルドは微笑みを崩さず、静かに答えた。


「英雄卿。君も知っているはずだ。私たちは皆、王国と教会のために最善を尽くしている。希望の光として、二人は民衆の期待を背負っている。その期待を裏切るようなことは、許されない」


その夜、大聖堂の控室。


アリアはベッドに腰を下ろし、ディオンがその隣に座っていた。


アリアは弱々しく言った。


「ディオン様……私、教会に戻されるのでしょうか……貴方様の側にいられなくなる……」


ディオンは彼女の手をそっと握り、淡々と答えた。


「ああ……お前はもう、十分にやった。アリア。光が消えた今、俺の呪いはさらに強まっている。お前をこれ以上危険に晒すわけにはいかない」


アリアはディオンの手に自分の額を寄せ、震える声で言った。


「私は……貴方様の側にいたいんです。たとえ道具としてしか扱われなくても……貴方様と一緒にいたい……」


ディオンは灰色の瞳を閉じ、苦い思いを胸に押し込んだ。


(お前の決意が、いつか最大の裏切りを生むことを……俺は知っている。それでも、お前を離したくないという気持ちが……俺の最大の弱さだ)


王都の夜は華やかだったが、二人の胸には、すでに深い影が落ち始めていた。


聖女の光が完全に失われた今、

上層部の本当の思惑が、静かに動き始めていた。


救世主として期待される二人は、

これから訪れる最大の絶望と、必然の裏切りを、静かに迎えようとしていた。

第24話、いかがでしたでしょうか。


王都に戻り、上層部の本音がよりはっきり見え始めました。

ディオンとアリアの絆が試され、物語は中盤へ移行しています。


感想や応援をいただけるととても励みになります。


次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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