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呪われた英雄と裏切りの聖女  作者: 寝不足魔王


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第18話 遺跡の深部と消えた光

第18話をお届けします。


灰の山脈の遺跡での戦闘と、アリアの浄化の完全な喪失を描きました。

ディオンの英雄の力が強まる代償と、二人の絆の脆さがより鮮明になっています。


これから物語は大きな転換点を迎えます。

シリアスな心理描写をお楽しみください。

灰の山脈の奥、古い遺跡の深部。


勇者パーティ一行は、暗く冷たい通路を進んでいた。壁には古い刻印が残り、空気は重く淀んでいる。魔王の眷属の気配が、ますます強くなっていた。


ディオンは先頭を歩き、古い直剣を強く握っていた。黒いマントが埃と霧にまみれ、灰色の瞳は前方だけを捉えている。


アリアはディオンの少し後ろを、よろよろと歩いていた。銀髪は乱れ、青みがかった金色の瞳はほとんど輝きを失っていた。出発以来、浄化の力がほぼ枯渇し、体力も限界に達していた。


レオン騎士団長が低い声で言った。


「この先の広間に、中核の眷属がいるらしい。英雄卿、頼むぞ。聖女殿は後方で回復に専念してくれ」


アリアは弱々しく頷いたが、声はほとんど出なかった。


「……はい……頑張ります……」


遺跡の広間に足を踏み入れた瞬間、激しい咆哮が響き渡った。


巨大な魔獣が姿を現した。灰色の体躯に黒い霧を纏い、目が赤く輝いている。黒霧の谷やこれまでの眷属より、明らかに強力だった。


戦闘が始まった。


ディオンが剣を抜き、一気に飛び出した。


「俺が正面から行く! お前たちは後ろで支援しろ!」


英雄の力が目覚め、ディオンの動きが加速した。一撃で魔獣の鱗を切り裂き、次の攻撃をかわしながら反撃する。しかし、力が強まるたびに胸に激しい痛みが走り、呪いの代償が容赦なく襲ってくる。


レオンとガルンが前衛を支え、ミリアの魔法が爆発する中、アリアは後方で必死に両手を掲げた。


「浄化の光よ……皆を、清めて……ディオン様を……守って……!」


彼女は最後の力を振り絞った。


しかし——黄金の光は、ほとんど出なかった。掌から漏れるのは、ほんのわずかな淡い粒子だけ。それもすぐに消え、彼女の体が大きくよろけた。


アリアは膝をつき、地面に手をついた。息が荒く、視界がぼやける。


「くっ……また……出なくて……」


ディオンは戦いながらも彼女の様子に気づき、灰色の瞳が見開かれた。


「アリア! 下がれ! もう無理をするな!」


魔獣の攻撃が激しくなり、ディオンは単独で前線を支えなければならなくなった。英雄の力がさらに強まり、一撃の威力が増す一方で、呪いの鎖が彼の心を強く締め付ける。


アリアは這うようにディオンのもとに近づき、震える手で彼のマントの端を掴んだ。


「ディオン様……ごめんなさい……私の光が……もう……完全に……」


その瞬間、魔獣の尾がアリアのすぐ近くを薙ぎ払った。ディオンが素早く剣を振るい、攻撃を弾いたが、アリアの体は衝撃で吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。


「アリア!」


ディオンは叫び、魔獣に向かって全力で剣を振り下ろした。


英雄の全力の一撃——魔獣の巨体が真っ二つに裂け、黒い血が遺跡の床に広がった。


戦闘終了。


広間に静けさが戻ったが、一行の誰もが息を荒げていた。


ディオンは剣を地面に突き立て、すぐにアリアのもとに駆け寄った。彼女を抱き起こし、灰色の瞳に強い動揺が浮かぶ。


「……アリア! しっかりしろ!」


アリアはディオンの胸に寄りかかり、弱々しく微笑んだ。声はほとんど聞こえないほど小さかった。


「ディオン様……私は……もう……浄化の力……使えません……ごめんなさい……貴方様を……守れなくて……」


ディオンは彼女を抱きしめ、淡々とした声で、しかし抑えきれない苦しみを込めて言った。


「お前は十分にやった。アリア。俺のせいだ……俺の呪いが、お前をここまで追い詰めた。お前の光が消えた今、俺の力はさらに強まっている……これ以上、お前を巻き込むわけにはいかない」


アリアはディオンの胸に顔を埋め、震える指で彼のマントを握った。


「離れたく……ありません……ディオン様……一人で……苦しまないで……私も……一緒に……」


他のメンバーたちが近づいてきた。


レオンが心配そうに言った。


「聖女殿……大丈夫か? 浄化が使えないとなると、次の戦いは厳しいな……」


ミリアが不安げに呟いた。


「聖女様の力……本当に限界なんですか?」


ディオンはアリアを抱いたまま、冷たく言った。


「もう十分だ。お前たちはアリアを王都に帰す準備をしろ。俺一人で任務を続ける」


アリアは首を横に振り、弱々しく言った。


「嫌です……ディオン様……私も……一緒に……」


遺跡の奥で、焚き火が小さく灯された夜。


ディオンはアリアの傍らに座り、彼女の銀髪をそっと撫でていた。


アリアの光は、ほぼ完全に失われていた。


英雄の呪いは強まり続け、

聖女の浄化の光が消えた今、二人の運命は大きく変わろうとしていた。


救世主として期待される二人は、

これから訪れる最大の絶望と裏切りを、静かに迎えようとしていた。

第18話、いかがでしたでしょうか。


アリアの光が完全に消えたことで、ディオンの苦しみと二人の関係が大きく揺らぎ始めました。

灰の山脈での任務は、まだ続きます。


感想や応援をいただけるととても励みになります。

次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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