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呪われた英雄と裏切りの聖女  作者: 寝不足魔王


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第17話 灰の山脈と失われゆく光

第17話をお届けします。


灰の山脈への任務開始と、アリアの浄化が完全に限界を迎えるシーンを描きました。

ディオンの英雄の力が強まる一方で、二人の絆がより脆く、切ないものになっています。


これから物語はさらに暗い局面へ進んでいきます。

シリアスな心理描写をお楽しみください。

王都セルフィアを出発して四日目。


勇者パーティ一行は、東部の山岳地帯「灰の山脈」へと入っていた。


灰色の岩肌が広がる険しい道は、霧と冷たい風が絶えず吹き荒れ、足元は不安定だった。古い遺跡の気配が、どこからともなく漂ってくる。


ディオンは先頭を歩き、黒いマントを風に翻しながら古い直剣を腰に差していた。灰色の瞳は周囲を冷静に警戒しているが、表情はより固く、感情を殺したままだ。


アリアは後方の馬車に乗り、銀髪を白いフードで覆っていた。しかし、彼女の顔色は極めて悪く、青みがかった金色の瞳はほとんど輝きを失っていた。出発前夜の浄化失敗以来、彼女の力はほぼ枯渇状態に陥っていた。


レオン騎士団長が馬を進めながら声をかけた。


「この先の古い遺跡に、強力な魔王の眷属が潜んでいるらしい。英雄卿、準備はいいか?」


ディオンは短く答えた。


「……ああ。俺が前を切る。アリアは後方で休んでいろ」


アリアは弱々しく首を横に振った。


「ディオン様……私も、行きます。浄化の力で……皆さんを支えなければ……」


その声はかすかで、ほとんど力がない。ディオンは振り返り、彼女の様子を見て馬を止めた。


「お前はもう限界だ。アリア。昨日からほとんど光が出ていない。無理をすれば、お前自身が壊れる」


アリアは震える手で馬車の縁を握り、必死に微笑もうとした。


「私は……平気です。貴方様が戦う姿を見ているのが、一番辛いんです。私も……一緒に……」


一行が灰の山脈の奥、古い遺跡の入り口に到着した時、事件は起きた。


遺跡の奥から、重い咆哮が響き渡った。黒い霧と灰色の瘴気が一気に噴き出し、複数の強力な魔獣が姿を現した。黒霧の谷の眷属より明らかに格が上だった。


レオンが剣を抜き、叫んだ。


「戦闘開始! 英雄卿、前衛を! 聖女殿、浄化を!」


ディオンは剣を抜き、一歩踏み出した。


英雄の力が目覚め、動きが加速する。一撃で魔獣の体を深く裂き、次の敵へ飛び込む。しかし、力が強まるほど胸に激しい痛みが走り、呪いの鎖が締め付け始めた。


アリアは馬車から降り、両手を掲げた。


「浄化の光よ……皆を、清めて……ディオン様を守って……!」


彼女は必死に力を振り絞った。


しかし——黄金の光はほとんど出なかった。掌から漏れるのは、ほんのわずかな淡い輝きだけ。それもすぐに消えてしまい、アリアの体が大きくよろけた。


「くっ……!」


アリアは膝をつき、地面に手をついた。銀髪が汗で額に張り付き、息が荒い。


「ごめんなさい……ディオン様……光が……出なくて……」


ディオンは戦いながらも彼女の様子に気づき、灰色の瞳が見開かれた。


「アリア! 下がれ! もう無理をするな!」


魔獣の攻撃が激しくなり、ディオンは単独で前線を支えなければならなくなった。英雄の力がさらに強まり、一撃の威力が増す一方で、呪いの代償も容赦なく襲ってくる。


レオンが叫んだ。


「聖女殿の浄化が効かない! 英雄卿、単独で押さえろ!」


ミリアの魔法とガルンの援護が飛ぶ中、ディオンは剣を振るい続けた。黒い血が飛び散り、灰色の岩肌が抉られる。


戦いは激しかったが、ディオン一人で魔獣の群れをほぼ殲滅した。


戦闘が終わった瞬間、ディオンは剣を地面に突き立て、膝をついた。黒髪が汗で乱れ、灰色の瞳に深い疲労と自己嫌悪が浮かんでいる。


アリアは這うようにディオンのもとに近づき、震える手で彼の腕に触れた。


「ディオン様……ごめんなさい……私の力が……もう……」


ディオンは彼女を抱き起こし、淡々とした声で言った。


「……お前は十分にやった。アリア。もう無理をするな。お前の光が消えた今、俺の呪いはさらに強まっている。お前を巻き込んだ俺のせいだ」


アリアはディオンの胸に顔を埋め、弱々しく言った。


「私は……貴方様の側にいたいんです……たとえ光が消えても……私の気持ちは……」


夜の野営地。


焚き火の炎が揺れる中、アリアはディオンの隣で体を寄せていた。他のメンバーは少し離れた場所で休んでいる。


ディオンは静かに言った。


「アリア……お前はもう、浄化の力をほとんど使えなくなった。俺の呪いは強まり続けている。この任務が終われば、王都に戻って……お前は教会に預けた方がいい」


アリアは首を横に振り、銀髪を弱々しく揺らした。


「嫌です……ディオン様。一人で苦しまないでください。私も……一緒に……」


ディオンは灰色の瞳を閉じ、苦い思いを押し殺した。


(お前の光が消えた今、俺の呪いは止められない。お前を守りたいのに……それが一番残酷な呪いだ)


灰の山脈の夜は冷たく、二人の影は長く伸びていた。


英雄の力が強まった代償は、確かに二人を蝕み始め、

聖女の浄化の光は、ほぼ完全に失われつつあった。


次の戦いが、さらなる絶望を呼び寄せることを——

二人は静かに、感じ取り始めていた。

第17話、いかがでしたでしょうか。


アリアの光が失われ始めたことで、ディオンの苦しみと二人の関係が大きく揺らぎ始めました。

灰の山脈での任務は、まだ始まったばかりです。


感想や応援をいただけるととても励みになります。

次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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