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14章 出会うもの全てが新鮮で

「ここは……」

「驚きましたかな?」


老人とリーシャを除いた他の四人がそれまでの出来事を全て停止させてその地形に目がいった。


四人の目の前に現れたのは、荒廃とした街を逆転させたかのような景色そのものだった。


言いえて妙だが、そう例えざるを得ない。


何故なら、先程の灰色しかなかった街に突如他の色彩が混じり込んできたような新鮮さを醸し出していたからである。


これは誰が見ても人が生きている証拠を十分に感じさせる風景だ。


そこに広がっていた光景は、テントのようなものを張り詰め、場所を陣取る少数の人々の姿があった。


なにやら大人達が焚き火の要領で火を起こし、炊事をしているように思えた。


その大人達の中に混じって、瓶容器で水を飲む子供達の姿もちらほら確認出来る。


その情景を見てユースティスが言った。


「テントか……。考えたものだな」


あちこちに張り巡らされているテントを見つめながら感嘆の声を上げた。


「少数ながらに生きながらえていると、このように無人に襲われてもいいよう転々と移動出来る設計にしているのですよ」

「さすがだな。人間の知恵が前面に出されていると言っても過言ではない」

「はは。そこまで褒めていただけると、今まで生きた甲斐がありましたな」

「生きようとする技術は衰えないのだな」

「それは違います。衰えないようにしているといった方が正しいですな」

「それもそうだな」


そう言うと、老人はより一歩前に出てテントのある方に近寄っていく。


老人に続いてアリア達もその後ろを付いていった。


「人々が生きながらえるためには、無人には必要としない知恵が必要となります。生きていくという一点に関して人は時に人知を超える発明をしたり、思考に至るのです」

「あなたが言うと、年を取るということにも意味が見いだせる物言いだな」

「案外悪くないものです。年を取るということも……強いて不満をあげるとすれば、体力が不足することぐらいでしょうか」

「それにしては仕方のないことだ。先刻の街でも似たような体験をして指摘してきた」

「それはいささか面白いですな。どこの老人も考えることは皆一緒のようですな」

「生きるということが難しくなった世界だからこそ辿り着く領域なのだろう」


これは先人達が培ってきた逃げるための知恵が所せましに敷き詰められているといった様子だ。


やがて、テントの近くまで歩いた老人が立ち止まりこちらを振り返った。


「そう言えば、名乗り遅れておりましたな。私の名前はカルーラ・オルディルトと申します」


深々と丁寧に自己紹介をするカーラに対し、四人も自信達のことについて述べる。


「なるほど、無人を倒す旅に出ていると」

「そうだ」

「それは誠に勇敢なることですな」


カルーラは心底感心したように頷いた。


「今まで転々と拠点を変えて行きましたが、貴方達のような方々と出会うのは初めてですな」

「まぁ、普通はいないからな……無人を倒そうとすること自体無謀であるって考え方も場合によっちゃ偏る」


ロンドがカルーラの言葉に対して返す。


「そうですな……。無人の殲滅は誰もが願うことですが、結局のところ力のある誰かに縋らなければ、到底叶わない願いゆえに」


カルーラは説いた。

誰もが願う願い事は、それを叶えてくれるだけの力を備えた者がいなければならないと。


「ただ願うだけでは何も変わりませぬ。行動に移さなければ、ただ老いて朽ち果てるだけの人生」

「カルーラ……さんはなんて言うか、しっかりとしてますね」

「ふぇふぇ、年老いてしまっただけですぞ。小さなお嬢ちゃん」


褒めてくれたアリアにカルーラは笑って応じた。


「年齢=知恵というものです。長く生きればその分先に待っている未来もまた幾重にも重なって立ち塞がってくる。それら全てを打倒してきたのは、生き永らえてきた英知の印ともいうべきでしょう」

「その考えは早慶じゃよメイド服を纏った淑女。年齢と知恵は決してイコール関係では結ばれることはまずないじゃろ。知恵とは磨かなければ朽ちてゆくもの」

「朽ち果てるもの……。そうですか。確かに述べるのには少し違いましたね」


カルーラの否定的な言葉にアルマリアも自分の非を認める。


「さて、客人をもてなさなければな。と言っても出来ることは大してないんじゃがな」


自称気味に言ってみせるカルーラに、全員が苦笑いする。


「いや、そんな事をさせるわけにはいかない」

「おや?ご不満ですかな。紳士殿」

「そういうわけでないが……」

「ならば、施しを受けられるのもまた人生。旅で疲れた体を癒すことくらいは出来ます」

「……」


ユースティスが黙る。


「お言葉に甘えてもよろしいのですか?」

「ええ、お構いありませんぞ」

「ユースティス。こう言っていることだし、少しだけでもいいから」


アリアが懇願するようにユースティスに言った。


「少しだけだ」


渋ったユースティスだったが、確かに旅に疲れているのも否めなく、施しを受ける事を承諾した。


「フェフェ、紳士殿の立場は少しだけ劣勢に見えるのぅ」


ユースティスの姿にカルーラは笑っていた。


「何か温かい物をお作り致しましょう。しばしお待ちくだされ」


そう言って老人はテントの方に歩いていくと、中でくつろいでいた若い男女二人に声をかける。


その様子を見ていたアリアは不思議そうに辺りを見渡し始めた。

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