表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/106

error code.78

「一体この街に何があったというのだ?」


ユースティスは純粋に気になった。

何があればこの街はここまで崩壊し尽くされていったのか。


その答えを知りたかった。

だが、彼の質問に老人は答える様子もなかった。


否。

答えたくなかったのだ。


もし答えてしまえば、思い出してしまうから。

辛く苦しい過去が。


何者にも変えられない疎ましい記憶が。

鮮明に、色褪せて。


ユースティスは知っている。

その気持ちを。


だからこそ、老人に答えられない理由があるとすぐさま理解出来た。


心配そうに見つめているアリアの姿もまた意味はないのだと。


沈黙が辺りを支配する中でーーー


「私達の街が奪われた理由を知って、貴方にはどんな利益になるというの?」


老人の代わりに、リーシャが言った。

紳士が視線を向ける。


向けた視線の先。

そこにあったのは凛とした鋭く光る赤い瞳。


全てを射抜かんとする強い目をした姿。

凄む彼女の顔がユースティスの視界に映り込む。


ユースティスは何も答えなかった。

何も答えられなかった。


その理由は簡単だ。


単純に話を聞こうとした自分が愚かであったと周知していたからである。


だから、ユースティスが口を開くことはない。

それ以上開いたところで恐らく何も変わることはないだろう。


それぞれが様々な思いを持って生きているということを、ユースティスは噛み締めている。


彼が黙っているのを、リーシャは何もないと判断した。


結局のところ知ったところで過去は変えられないと知っている。


理解したところで共感することは出来ない。

所詮は自己解釈で終わるのがオチだろう。


彼が黙っているのを良しとしたリーシャが視線を外そうとしたその時ーーー。


「知るということに意味があるということですよ」


という声が凛とした声が聞こえてきてリーシャは視線を外すのを止めた。


その声はユースティスの後ろから聞こえてきた。


視線をさらに奥へ鋭く向けると、そこにはメイド服に身を纏った淑女が、リーシャに向けて同じく射抜かんとする強い目をして視線をぶつけていた。


彼女の言葉にリーシャが反応する。


「知るということに意味がある?どういうことよ」


リーシャは理解が及ばなかった。

彼女の言葉に対する解釈が足りなかった。


「至極単純ですよ。単なる興味本位というやつですよ。誰しもが持ちうる知的好奇心をくすぐられたからこそ、彼は知りたいと思ったのです。最も、私達がこの街の事情を知るということに大した意味はないですが……ですが、知るということに意義はあると考えています」


ますます理解が及ばなかった。

だって彼女が出したその答えは、結局今自分最低限知りえる出した答えと同じだったからである。


しかし、その意見を彼女は自ら否定した。

否定したのにも関わらず、メイドは更に肯定した。


その事実にリーシャは困惑する。

その困惑を突いてくるかのように、アルマリアは更に告げる。


「誰かに話すということに、何か悪いことが起こりますか?」

「いまいち言いたいことが分からないわね」

「分からなのならばお教えしましょう。つまるところ貴方方は、自分で自分のことを否定しているのですよ。だから、話すことを極端に躊躇ためらったのです。自分達の中で、自分達の力量で殻を抑えてしまっていては、いつまで経っても心のわだかまりが消えることはないでしょう」

「うるさいわねッ‼自分のことを否定している?笑わせないで。否定してたら私達のこの後悔は意味がないことになる」

「そう言っているのですよ?その野蛮的な考え方ではご理解いただけませんでしたか?」

「……ッ‼このメイドは何なんですか?」

「こちらの台詞です野蛮人」

「野蛮人ってどういう意味よ」

「第一印象からあまり好印象ではありませんでしたよ?ビルの上から飛び降りようとするなんて野蛮極まりないです」

「何ですって⁉」


突然女二人の口論が始まる。

熱を帯びていく口論に口を挟む第三者はいない。


その様子を見ていたアリアは口を開けて佇んでいる。

まさに開いた口が塞がらないといった状態だ。


「ねぇ。アルマリアって誰からも嫌悪感を抱かれるのかな……?」

「俺が知るかよ嬢ちゃん……」


二人の女性の喧嘩を目の当たりにしていたアリアとロンドは冷や汗を掻いていた。


二人はそれ以上語ることなくアルマリアとリーシャが喧嘩しているのを黙って見守ることにする。


二人が喧嘩している様を黙って見守っていたユースティスが呆れた様子で深い溜息を零す。


「はぁ……」

「溜息ですかな?」

「あぁ……、すまないな」

「いえいえ。大分お疲れのようですね」


老人は優しい瞳を向けて喧嘩している二人を見つめる。

ユースティスも釣られて視線を向けた。


「そうだな。他人が喧嘩している様子を見ると、まるで駄々をねる子供を優しく見守る親御の気持ちが想定出来ると思ってな」

「左様ですか。まだお若いのですから今の内から溜息を吐いてはツキも逃げてしまいますぞ」

「ふっ、運か……。生憎あの女と出会ってからそんなものは当の昔に逃げてしまってな」

「ははは。それは誠に残念ですな」

「全くだ」


そうこうしている内に、今までの場所とはまた違った雰囲気を纏った地形が現れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ