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「あ、ありがとう」
「礼なんていらない」
「そっ、そう……」
冷たい態度を取られ、ぎこちなくなる。
アリアは下を俯いてしまった。
そんなアリアをほっといて少女は全員の顔を見渡して言った。
「そんなことよりーーーあんた達こんなところに一体何の用?」
その声色は若干怒気が混じっていた。
戸惑って俯いているアリアは答えない。
彼女に変わってユースティスが代わりに答える。
「俺達は無人を討伐する旅に出ている者といったところだ」
その言葉を聞いた瞬間ーーー
彼女は眉を動かし目を見開いて、驚いた様子で彼を見る。
「討伐……?そんなの頼んでないけど?」
「あぁ。俺達の目的地は別の場所だ」
「ここに来たっていうわけじゃないってこと?」
「そういうことになるな。本当の目的は別の街から依頼を受けた。内容は無人の殲滅だ」
ユースティスが三度口を開くと、少女は呆れ返った顔をして言い放った。
「笑わせないで。無人の殲滅なんてあんた達少数の人間に出来るわけないじゃない。分かったら、さっさとここから立ち去って」
少女は冷たい態度で接すると、アリア達に早く帰るように勧めて来る。
彼女の様子に首を傾げる四人。
そうして、アリア達が帰るのを少女がじっと見つめているとーーー
「これこれ。せっかく旅の途中で疲れ果てた方々にそんなことを言うもんではないぞ?リーシャ」
「ッ⁉︎」
突然の声に驚いたアリアが構える。
「おお、すまないね。驚かせてしまったようだ」
「おじいさま……」
いつの間にか背後に現れた老人がアリア達の間に割って入ってきた。
老人にリーシャと呼ばれた少女が拗ねた子供のようにそっぽを向いて明後日の方向に首を向けた。
その様子に老人は頭を掻いた。
「すみませんね。うちの娘が粗相を……」
深々と丁寧に謝礼をする老人に対してユースティスが口を開く。
「娘なのか?」
ユースティスの問いにアリアも耳を立てる。
二人の顔を交互に見やる。
見たところリーシャと老人の間には年齢的にも離れているものを感じる。
顔立ちもほとんど似ていないように思えた。
違和感を感じたユースティスがその疑問をぶつけた。
「ええ、血は繋がっていないのですがね」
続いた老人の言葉にユースティスは納得する。
「なるほど……」
「彼女もまた無人に家族を奪われました。被害があった街に一人でいるところを私が保護しました」
「そんなのこの人達に言わなくてもいいでしょ‼︎」
リーシャは自分の過去を放され恥ずかしくなったのか。
その場から立ち去り、どこかへ行ってしまう。
その様子を全員が見つめ、いち早く視線を切ったユースティスが老人を見た。
「保護したということは……貴方はコード持ちなのか?」
ユースティスの問いに老人は目を瞑って首を横に振った。
「残念ながら、私はコード持ちではありません。たまたまそこに居合わせたふらつきの商人です」
「そうか……」
ユースティスはがっかりした面持ちで下を向いた。
次いで老人がアリア達を見る。
「貴方方はーーー」
「俺達は三人がコード持ちだ。そこにいるバンダナ男だけは違うがな」
そう言ってユースティスは、老人とリーシャにロンドのいる方に顔を向かせる。
ロンドは向けられた二つの顔に笑顔を向け、手を振って応える。
「そうですか。まぁ、ここで話すのもなんですから。どうぞ」
「いや、先を急いでいるので―――」
「まぁ、そう言わずに。ほんの少しでもいいですので」
「……」
ユースティスが思案顔で俯く。
断ろうにも熱心に説得されそうになっている状態は非常に厳しいものがあるだろう。
一人で考えているユースティスを嘲笑うかのように、アルマリアが言った。
「いいではないですか。ほんの少し寄るくらいなら支障はきたさないはずです」
「……」
ユースティスの心底嫌そうな顔でアルマリアを見る。
彼女は澄ました顔で紳士を無視する。
老人がアリア達を手招いて連れて行こうとする。
特に断る理由もないので四人はリーシャと一緒に老人の後ろを付いていく。
慎重に足を進めてアリア達一行は、荒廃とした街に足を踏み入れていった。
踏みしめる足に砂利が響き渡る。
その音は六つとなり足踏みをする。
逃げていたリーシャが五人の後ろを張るようにして付いて行った。
あいも変わらず広がる閑散とした風景に、仕方なく付いてきたユースティスは前を歩く老人に問いかける。
「この街は随分と人気が少ない……というよりかは、人がいないと言っても過言ではないように思えるがーーー貴方達二人の他に人はいるのか?」
鋭い視線を向けて老人に問いかける。
すると、前を歩いていた老人はほんの少しだけ首を後ろに向けてユースティスの方を見る。
そして、再び前に戻すと、ゆっくりと声を発する。
「そうですね。端的に言ってしまえば、私達以外の人間もきちんと生存しています。ですが、ほんの一握りしか生きながらえていません」
「……」
「何しろ、街は既に衰退しきっている。それは周りを見れば明らかでしょうーーー」
言われてアリア達は周りを見渡す。
歩いて数分、だがしかしーーー
その風景は一向に変わってはいなかった。
淡い期待もなく、その景色は荒廃地となっている。
何もない空間が重くのしかかるようだ。
それは辛く、虚無感に襲われ、恐怖に支配されるかの如く。
何もないからこそ不気味ささえ伝わって来るようだ。
その風状にアリア達は思わず、言葉を失い息を呑む。




