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連れ回される不快感を煽られていると、
「いいじゃねーか兄ちゃん。軽い寄り道だと思えばよ‼」
「……」
ユースティスは頭を抱える。
アルマリアに加えてロンドまで賛成となれば、紳士がいくら否定したところで意見を返されてしまうだろう。
仕方なく中に入っていく。
足を踏み出した瞬間、凍てつくような寒さが四人を襲った。
先程までの暑さが嘘のように冷え込み、体を侵食していく。
さすがのユースティスも次の一歩を踏み出すのに時間を有するが、先頭を歩くアルマリアの歩は依然として止まらなかった。
「そういや兄ちゃん」
若干イラついているユースティスに、ロンドが話しかける。
「なんだ?」
「今回向かう街はどうなんだい?」
「どうというのは?」
「いや、風景とかさ。外の街とかあまり詳しくないから知っておきたくてよ」
「……」
ロンドが視線をちらちら向けつつ気まずそうにしているのをユースティスは察し、ゆっくりと口を開いて言った。
「そうだな……。一言で言えば、栄えていると言えるだろう」
「栄えている?このご時世にかい?それともあれか。またホルノマリン街みたいに無人に襲われないとかか?」
「いや、今度はそう言ったわけではない。単純に無人に襲われていながらも、衰えることを知らない街ということだ」
「なんだそりゃ……」
「言葉で理解するのは難しいだろう。着けば分かる」
そう言って、ユースティスは言葉を切った。
四人の間に沈黙が走る。
先走っていくアルマリアと、我が道を進むユースティスのペースを崩さずに歩く様に、両サイドを挟まれたアリアとロンドが困り顔で付いていく。
荒廃とした街を散策しているとーーー
不意に辺りに不気味な静けさが押し寄せてきた。
その瞬間、その場にいた全員の肌にひしひしと冷気が伝わる。
何かを感じ取ったロンドが視線を張り巡らせてその正体を探る。
そして、気付いた瞬間ーーー
凄まじい速度で何か黒い影がこちらに向かってきた。
辛うじて目で追える速さの影がロンドの視界に映った。
それがアリアの背後を取ろうとする。
「おい‼︎後ろ‼︎」
「え?」
ロンドの言葉で振り返ったアリア。
その彼女の目の前に突如、無人が現れる。
咄嗟のことで油断していたアリアは動けない。
「きゃぁぁああああ‼︎」
「お嬢様‼︎」
驚いたアリアが悲鳴を上げると、近くにいたアルマリアがすかさず駆けつけようとする。
気配など全くといっていいほど感じることが出来なかった無人が、アリア目掛けて攻撃を放つ。
咄嗟に反応したユースティスが瞬時にアリアの前に現れて、その攻撃を防ごうとした。
だがーーー
「ヒュンッーーー」
突発的に聞こえてきた音が、その場にいた全員に響き渡る。
アリアを助けるそれよりも先に、ユースティスの横顔目掛けて何かが飛んできた。
どこからともなく飛んできたその何かが無人に刺さる。
「ギィイィイイイイイイイーーー‼︎」
無人のけたたましい雄叫びが空を切る。
無人に飛んで行ったものの正体はーーー矢だった。
鋭く尖った矢がユースティスの真横をすり抜け、無人へと飛来したのだ。
そして、その矢が無人に突き刺さると、まるで急激に体温が奪われたかのように。
無人は内部から凍てつき始め、
「ギィイイイイイイィィ……ィィ……」
やがて、美しく飾る氷の氷像となった。
中身が無人でなければより一層華やかになっただろう氷像。
次いで飛んできた矢が再び命中し、無人の氷像にヒビが入り割れて粉々に砕け散った。
アリアはその現象に口を開けてその場に呆然と立ち尽くす。
氷像が壊れたのを確認したユースティスは、弓矢が飛んできた方向に目を見やる。
後方に視線を向けると、そこには一人の少女が鋭い視線を向けながらこちらを見据えていた。
彼女は崩壊しきったビルの上にいた。
悠然と立ち尽くしている姿が戦乙女のように神々しく光を放つが如く。
無人が完全に活動停止したのを確認したその彼女が、唐突にビルの上から飛び降りた。
その光景に思わず、
「危ない‼︎」
と、アリアが声を発する。
呆けていたアリアが忠告を入れるが、少女は自由落下の法則で地面へと落ちていく。
このままでは少女は地面にぶつかって死んでしまう。
そう思ったが、彼女との距離はだいぶ離れているため今から助けに行ったところで間に合うはずもなく。
徐々に落ちる速度が増していき、地面へとぶつかる―――
その直前で、少女はおもむろに崩壊しているビルを蹴って天へと舞う。
そして、前方に飛んだ彼女が体を曲げて背中から地面へと転げ落ちると、衝撃を和らげ飛来した。
砂埃を立ち上げて彼女は平然としていた。
体に付いた埃を手で軽く払った少女は真っ直ぐアリア達を見つめてきた。
そして、彼女はスタスタとこちらを歩いてくる。
その顔は怒っているように見えた。
徐々に近づいて来る彼女の姿を見つめながら、目の前にきた少女に向かってアリアは口を開く。




