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「アルマリア。日傘を持っているのはどういうことだ?」

「何か問題でもありますか?私が持っていて不都合な点があるようには感じられませんが?」


む……。

何やら不穏な空気が―――


「持っていることに対して文句を言うはずもない」

「でしたら、一体なんだというのですか?」

「それをお嬢様に渡すという選択肢はないのか」

「お嬢様の分も既にありますよ」


そう言って、彼女はユースティスにアリアを見ろと促す。

淑女の指示に従ってみれば、確かにアリアの手には淑女の物と同じ白色の日傘が太陽を塞ぐようにして指してあった。


「……」

「それで?まさか―――『俺達の分は無いのか』なんて無様な発言は致しませんよね?」

「……」


ユースティスは終始無言だった。

どうやら今回はアルマリアの勝ちのようだ。


このように毎回喧嘩しているため見ているこっちがひやひやする状況である。

不意に目が合ったロンドと半笑いになる。


「……」


半笑いのアリアとロンドが視線を外す。

ふっと、溜息を吐いて重荷を解いた。


その時―――

四人に当たっていた風が収まり始める。


「おっ、風が収まったな」


強く吹いていた風が収まると、四人の前に荒廃地と思わしき場所が目に入ってきた。


足を踏み入れた瞬間、何やらただならぬ気配が感じられた。


涼しく吹く風が鳥肌を立たせる。

無音が辺りを支配する。


この空間に足を踏み入れた時から違和感が訪れていた。


どことも違うその雰囲気に呑まれながら四人は歩を進めていく。


「随分、しなびたところだな。ここも街ーーーだったのか?」


ロンドが辺りを見渡す。

そこは確かに、街の風景だったと思わしき場所だった。


あちこちにビルが佇まい、繁華街を思わせる小店舗が仕切りなしに建ち並んでいた。


だがーーー

そのどれもが全て無惨に破壊され、街の見る影もない状態だった。


「……」


ビルはその外壁を崩し崩壊。

建物はボロボロで、中はほぼ空洞に近く空っぽだった。


何もない空っぽ。

その空洞で中身の抜けたビルの先に見えた景色―――


そこに広がっていたのは―――やはり何もないただのもぬけの殻だった。

閑散とした景色。


閑古鳥の泣きそうな無音地帯。

シンとした風景が広がる。


ここは異常だ。

全員がそう思った。


建物の先にあったそれは異形。

奥に潜むは異界な空気。


耳をすませば、聞こえるはずのない奇怪音が聞こえてきそうだ。


「なんだここ―――」


その異様な気配を鋭敏に察したロンドが、すっと目を細め辺りを見渡す。


「どう思う兄ちゃん?」

「さぁな。分からん」

「兄ちゃんでも分からない場所か……。不気味だな。こういう街は何か出そうだぜ」

「本当ね……」


アリアが二の腕を擦って周囲を警戒する。

無人以外の化け物が出てきそうな雰囲気だった。


全員がすんなり入ることが出来ずに、一度立ち止まる。


歩幅の音は消え失せ、砂を踏む足音はなくなり、辺りは無音となる。


しばらく四人は固唾を呑んでその光景を噛み締めた。

きっとこれが普通の景色なんだと。


ホルノマリン街を訪れた四人は一気に現実へと引き戻されるかのように。


急速に冷え切った空間を堪能する。


すると―――


「もう少し進んでいきましょうか」


誰もが生唾を呑んでいると、不意にアルマリアが提案する。

だが―――


「おい、ちょっと待て」


その提案にユースティスが待ったをかける。


「明らかに違和感だだ漏れのこの場所に何の躊躇いもなく入っていくのか?勇敢も甚だしいな」


彼女が提示した提案をすんなりと受け入れることをユースティスは拒んだ。


アルマリアが鋭い視線をユースティスに向ける。


「あなたのその『取り合えず観察してから』という思想に関しては否定しませんが、少しは躊躇なく入ることもいいと思いますよ。気持ちの吹っ切れることこの上ないですから」

「どこがいいんだそれは……。お前の考えは時に度が過ぎることがある。さすがの俺でもこれを簡単に受け入れることは出来ない。明らかにこの場所は異常だ。それはお嬢様も―――いや、ここにいる全員が薄々感じているはずだ」

「異常だから入ることを拒むのですか?通常ではないから一旦引くと?ではあなたは、この先に人が危険に晒されているかもしれないという可能性を捨てているということですね?」

「なんだと?」

「あくまで可能性の話ですがね……。しかし、この先に人が襲われていないとも限らないのではにですか?」

「……」

「私達の目的はこの先にある街ですよね?ですが、その道中で何か問題があったとしてもそれはこちらで対処しなければならない事象ではないですか?」


そこまで言われてユースティスは何も言わなくなる。

これは彼女の意見が半分は正しいからである。


正しければ否定したところでユースティス自身がその否定材料を持ってこなければ、この話は否定することが出来ない。


故にユースティスは何も言えなくなった。


アルマリアの有無を言わせない態度にユースティスは顔を歪ませる。

淑女の勇敢さは買うが、たまには無謀になるということも理解してほしいものだ。


でなければ、連れ添っているこちらの体力が持たない。

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