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この先、彼の人生はきっと罪滅ぼしで埋め尽くされるだろう。
だがそれでも、彼に人生に今日という日が刻まれるだろう。
生きた証が。
生きてきた証が。
助けられたという恩恵が。
記憶に残り、記録に残る。
そうして新たな一日を迎えるのだ。
彼が去っていった背中を見つめる。
ユースティス達の周りにはいつの間にか人はいなくなっていた。
四人はその場を後にする。
ユースティスは宿に付こうとする。
その宿はリーナがいる宿だった。
「おかえりなさいユースティスさん」
中に入るなり、リーナがお出迎えしてくれた。
ユースティスは案内され中へと進む。
案内された部屋は変わらず泊まっていた部屋だった。
中に入れば既に三人がいた。
アリアにロンドにアルマリア。
三人の顔を見渡した。
その顔はどこと無く晴れていて清々しい表情をしている。
ユースティスは一度ロンドを見つめる。
彼は薄ら笑い、見つめ返す。
「もうこの街に用は無いだろう」
「報酬も頂いたことだしな」
「そう。倒すべき敵はいなくなった。明日にでも出発する」
ユースティスの言葉にアリアが言う。
「そうね……。私達の役目は果たしたわ。後は村長さんがこの街をどうにかするしかないものね」
少し悲しげな瞳を見せるアリア。
哀愁を漂わせて彼女は言う。
「そうだ。俺達に出来ることはもう無い。後は休みを取って明日に備えるだけだ」
「うん……分かった。なら、早く休みましょう。疲れが体に染み付いているもの」
「では、お嬢様。こちらに」
アルマリアの先行でアリア達女性陣は姿を消す。
残ったユースティスとロンドはしばし無言だった。
「……」
「……なぁ、兄ちゃん」
「なんだ?」
眠りに付こうとしていたユースティスにロンドは声をかける。
「俺が兄ちゃん達に出会った時に言ったこと……覚えているか?」
彼の言葉にユースティスは過去を遡って記憶を漁る。
「あぁ……、確か奥方が殺されたと言っていたな」
「そうそう。まぁ、我ながら情けない話さ。女一人守れなかった不恰好な男が俺なんだがな……」
ロンドの声は弱くとも、その表情はどこか吹っ切れた顔をしていた。
「聞くかい?」
「いや、遠慮しておこう」
「そうか。連れねぇな。折角この街に旅立つ前のちょっとした雑談でもしようと思ったんだが……。ならこの話は話す時がきたらにしようかね」
ロンドはそう言うと、ベットに寝転がって眠りに付こうとする。
二人の間に静寂が立ち込める。
シンとした部屋に月明かりが窓から差し込んでくる。
今日という一日が終わった。
無人は倒し終えた。
この街に平和が訪れる。
束の間の焦燥だったが、アリア達のおかげで街の危機は去った。
明日からは通常運転でこの街は再開するだろう。
それはそれで自分達には関係のない話だ。
明日には旅立ってしまう。
名残惜しくはない。
彼らの歓迎には驚いたが、それでも罪を抱えた者達でしかない。
悪ではないにしろ、正義でもない。
彼らが彼らなりに生きていこうとした証をユースティスは見た。
見た上で否定した。
彼らのやり方が間違っているから。
自分の許容出来るものではなかったから。
明日からこの街の住人はどのような心象を持って過ごしていくのだろうか。
そんなことを思い更けながら、ユースティスは深い闇へと引き摺りこまれたいった―――。
♦♢♦
肌に日光が当たり、目を覚ます。
気が付けば太陽は昇り、すっかり気持ちのいい朝を迎えていた。
目を覚ましたユースティスは起き上がる。
清々しい朝だった。
体を起こしてベットから這い出る。
そこには昨日と同じ部屋が広がっていた。
窓から零れる陽を浴びるために近寄る。
その先に見えた景色が目に入ってきた。
その風景は昨日とは違った。
街の一部は崩壊していた。
それは勲章だ。
この街が今日という日を迎えられるということを、やぶさかではない気持ちで見つめる。
何かを救うということに理由はいらない。
救ったことにこそ意味はあるのだ。
そう思っていると―――
「よう。兄ちゃん相変わらず朝早いな……」
目を擦りながらロンドが起きる。
「癖だ。早く起きることは悪くない」
「そうだな」
ロンドが一つ欠伸をして同感する。
ユースティスが窓から離れようとしたその時―――
「皆さん。起きてください。朝ですよ」
という宿主であるルニーの声が聞こえて立ち止まる。
その声はどうやら自分達の部屋からではなく、その少し離れた場所から聞こえてきた。
恐らくアリア達がいる部屋の前にいるのだろう。
「はぁ……」
その事象にユースティスは一つ溜息を吐いて自身の支度をする―――。
慌ただしい音と共にアリアが急いで宿を出ようとする。
「ちょっと待って‼置いてかないでーーー‼」
息を切らしてユースティスの元に来たアリアに、彼は目を細めて言う。
「支度が遅い」
「ごめんってば‼」
息を整えながらアリアは深呼吸をする。
そして、ルニーに向き直り彼女を見つめる。
「ルニー。ありがとうね」
「いえいえ、私は宿を提供しただけですから。アリアさんこそありがとうございました」
ルニーは腰を曲げてお礼を言う。
「お礼されることなんてないわ。私達はやるべきことをやっただけ。後はこの街の人達の自由よ」
「はい。いつかもし、また会える日が来ましたらその時は、ぜひうちに寄ってくださいね」
ルニーは満面の笑みを浮かべてアリアを見る。
次いでユースティスを見て口を開いた。
「ユースティスさんもありがとうございました。料理の方手伝っていただいてしまって……」
彼女は少しだけ頬を赤らめて言った。
その言葉にアリア達は驚きを隠せなかった。
「あぁ」
ユースティスは素っ気なく返事をすると、踵を返してその場から立ち去る。
「ユースティスどういうこと?料理を手伝ったて」
「……」
「ちょっと。無視ってどういうこと?」
そそくさと立ち去ろうとするユースティスに引っ付くように付いて行くアリア。
彼女の後をアルマリアとロンドが笑いながら付いて行く。
その背中をルニーはいつまでも見つめる。
大変仲の良い方々だったなと記憶して、その背中を見えなくなるまで見つめるのであった―――。
♦♢♦




