エピローグ
四人は歩を進める。
それは止まることのない歩。
歩みを止めることのない進み。
決して休まることのない道だ。
そんな中、ルナーの言葉が気になったアリアが延々とユースティスに問いかけていた。
彼はあからさまに無視をして歩みを止めなかった。
問い詰められながらユースティスが街を出ようとしていると、目の前に一人の老人が現れた。
「……どうした?」
突然立ち止まったユースティスの背中に彼の後ろに付いていたアリアが鼻をぶつける。
彼が問いかけると、この街の長である村長がふと笑った。
「いえ、最後の見送りをと思いましてな」
「そうか」
ユースティスは納得すると、その脇を通り抜けようとする。
村長は何も言わず、彼が通り過ぎていくのを待った。
アリアは少し躊躇いながらも、不思議そうに見つめその横を通り抜けていく。
彼女に続いてアルマリアとロンドも通り過ぎる。
そうして全員が通り過ぎたタイミングで村長が口を開いた。
「次はどこに行かれるのですかな?」
その問い掛けにユースティスは立ち止まる。
「あぁ、この世は無人で支配されている。あれらを倒すには、コード持ちであるものしか倒せん。だから、無人がいるところが俺達の行くところだ」
ユースティスが言う。
その言葉に村長は納得して、それ以上何も言わなくなる。
それを確認したユースティスは再び歩き出した。
村長との距離は離れ、次第にその姿は四人の視界から消えた。
四人はそのままホルノマリン街を抜けてモルベス街道へと足を進めた。
街道をいく最中でーーー
「次の街って言ったって、目的地の目星はついてるのか?」
先程の言葉を聞いていたロンドが聞く。
「それについては安心しろ。先程通達が来た」
そう言って、ユースティスは手に持っていた封筒をロンドに見せる。
「なんだそれ?」
見慣れない茶色の封筒にロンドは困惑する。
その困り顔の表情に、ユースティスが説明する。
「困っている者達が差し出す手紙のようなものだ」
「手紙?」
「街の危険が及んでいるという知らせだ」
「なるほど」
「この髪を頼りに次の街に行く」
ユースティスがそう言うと、彼は真っ直ぐとロンドを見る。
(ロンド。言うなら今しかないぞ)
彼の目はそう訴えかけているように思えた。
(そうだな……)
ユースティスに背中を押され、ロンドは目を瞑る。
彼は意を決心して口を開いた。
「なぁ、嬢ちゃん」
「どうしたのロンド?」
ロンドの呼びかけにアリアが聞き返す。
アリアが彼の顔を見つめると、彼は真剣な眼差しでアリアを見る。
そして、言った。
「俺も付いて行っていいか?」
「え?ロンドも……?」
アリアは呆ける。
彼の言葉を理解するのに、少々時間が取られる。
困惑したかのようにアリアは自分では一任出来ないとユースティスを見つめるが……
彼はまるで、彼女の答えを待っているかのようにただ黙っていた。
この決定権はアリアにある。
自分にはない。
この先の人生を決めるのは彼女だ。
自分は彼女が決めた選択肢を辿って行くだけでいい。
それだけが自分なりの信条というものだから。
ユースティスは彼女の答えを待つ。
アリアは逃げるようにアルマリアを見るが、彼女の意思もユースティスと変わらないようだ。
ただこちらを見つめてその答えを待つのみーーー。
自分には重い決定だった。
何故なら、この選択肢だけで彼の人生が決まるといっても過言ではなかったからだ。
自分達に付いていくということが意味することを、目の前にいるからは理解しているのだろうか?
無人を殲滅するというのは途方も無いことだ。
無限とも思える時間を過ごしていかなければならない。
自分ならともかく他の人を巻き込むなど、考えたことのないアリアからしたら、この決断は大いに迷いを生む。
アリアはしばし無言になる。
答えは簡単には出ない。
出るはずもない。
喉が乾く。
頭が回らない。
真っ白になる。
瞳がおぼつかなくなり、焦点が止まらない。
おぼろげな瞳でたまたま彼の顔を見た。
すると、その顔にアリアは正気を取り戻す。
彼の瞳が澄んでいた。
その瞳は嘘偽りのない真っ直ぐな純粋なものだけが出来得る瞳であったとアリアは理解した。
やがて、ようやく理解したアリアが真っ直ぐ彼を見つめる。
そして———
「構わないわロンド。もちろん大歓迎よ」
彼女の笑顔にロンドは笑ってみせた。
「そうか‼いやぁ~よかったぜ。断られるんじゃないかとひやひやしたぜ‼」
ロンドは額を拭って言った。
彼女の決断を聞いたユースティスは細く笑む。
「話は終わったか?行くぞ。無人は待ってはくれない」
そう言うユースティスに、他の三人が付いて行く。
アリアは笑った。
新しい仲間が一人増えたことに内心喜んだ。
無人は待ってはくれない。
この世界に絶望をもたらすだろう。
幾度となく破滅をもたらし、幾千の崩壊を導く。
それでも戦う仲間がいれば怖くはない。
一緒に立ち向かう戦仲間がいれば、恐れることはない。
希望はまだ捨てない。
私達がいるところに平和が訪れると証明してみせる。
ふと空を見る。
この空は青い。
素晴らしい青さだ。
この青い空を、広がる大地を、人々の住む世界を。
守る。
守り抜くために。
人々の顔に笑顔が取り戻る日をいつか夢にーーー
そう胸に決意して。
だってそれが……
私達の行く末だから―――
一巻の終わりです。
次が二巻の始まりです。




