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アリアには全く分からなかった。
だが、外から見ていたユースティスとロンドはこの出来事を理解出来た。
なぜ、無人の攻撃が突然弾かれたのか。
その答えは―――
「大丈夫ですか?お嬢様」
ふわっと、隣に現れた淑女がアリアの様子を心配してきた。
呆けていたアリアはゆっくりと声のする方を見た。
開いた口が塞がらないといった様子で隣にいたアルマリアをじっと見つめる。
彼女はなぜか微笑んでいた。
それはアリアが無事だったことに対して喜んでいるのか。
はたまた戦闘に楽しさを覚えたのか。
理解がおぼつかないアリアにはすぐさま彼女の糸を汲み取ることは出来なかった。
しかし、今のアリアにとってアルマリアの微笑みは、さながら地平に降り立った女神の雰囲気に近かった。
女神と称しても怒られないだろう。
それくらいの奇跡を彼女は、いとも簡単に起こして見せたんだから。
そんな淑女がアリアを真剣な眼差しで見つめる。
「お嬢様。自分の命を諦めようとしましたね?」
「……」
「簡単に諦めていい命などありません。それはお嬢様自身に言えることでもありませんか。ではなぜ、諦めようとしたのですか?」
「……」
アリアは応えられない。
なぜなら、まだ頭の整理がつかない。
事態の把握が出来ていないからだ。
そのことに気が付いたアルマリアは優しく言う。
「ゆっくりで大丈夫ですよ。そんなことより―――」
彼女はアリアから視線を外して同じように呆けているユースティスを見た。
「ユースティス。貴方……お嬢様のこと、諦めようとしましたよね?」
「……ッ」
「まさか、あの方との約束をこんな簡単に無下にしようとしませんでしたか?」
アルマリアの言葉にユースティスは無言だった。
その無言はアルマリアにとっては肯定に等しかった。
「否定しないのですね」
「あぁ……、悔しいが今回に限りお前の意見が正しい」
「残念ですね。貴方のお嬢様をお守りするという意思はその程度だったのですか?」
「……」
ユースティスは何も言えない。
今回は何も言うことが出来ないのだ。
弁明なんてものは持ち合わせていない。
あるのは彼女が感じ取ったユースティスの真意だけ。
彼女が紳士がしたことに対しての見たこと感じたことにユースティスは否定しない。
「普段の貴方の行いが明確に現れた証拠ですね」
「普段の行い?」
「そうです。なにかとお嬢様を成長させようと必死になるところですよ」
「……」
「そのせいで周りが見えなくなる。本質を掴めなくなる。だから見逃すのです」
「……そうだな」
「貴方は忘れたのですか?いいえ。忘れてなどいないはず。私達は誓ったではないですか。この身を賭してでもお嬢様をお守りすると。ならば、本来の戦い方を実践するまでではないですか?」
「………………お前に一杯食わされるとはな」
「そういう時もたまにはあってもいいんじゃないですか?」
「冗談はほどほどにしろ」
ユースティスはふっと笑った。
彼が笑ったのを見て、アルマリアもつられて笑う。
雰囲気が変わった。
空気が変わった。
それだけで十分だった。
いつもと違うことをやっているからいつまで経っても変わらないのだ。
ならば、いつも通りに戻せばいいだけ。
本来の姿に戻ればいいだけ。
まどろっこしいのはやめだ。
確かに自分はアリアを成長させようと必死だった。
そのせいで彼女がまだ未熟であるにもかかわらず、一人で戦わせようとしていた。
その方が成長を促せると思っていたからだ。
だが、そのやり方はたった今間違いであるということが分かった。
信じてきた道が間違いであると分かったのなら、行く道を変えればいいだけ。
正しいやり方を示せばいいだけ。
選択肢は一つだけではないのだから。
「どういうことだ?」
その二人のやり取りを聞いていたロンドが聞く。
「何。戦闘方法を変えるだけの話だ」
「戦闘方法を?」
「心配するな。それほど難しくはない」
そう言うと、ユースティスは真剣を鞘に納めて素早く無人から距離を取る。
「アルマリア」
「分かっています」
ユースティスが淑女の名前を呼ぶ。
すると、彼女も一度銃を降ろしてユースティスの前に立つ。
「おいおい……何をする気だ?」
その様子をじっと見つめる。
二人が縦になるように連なる。
アルマリアの背後をユースティスが守るように。
「行くぞ」
「えぇ」
次の瞬間―――
二人が動き出した。
アルマリアが先陣を切って行く。
彼女は銃口を無人に向け引き金を引いた。
「フレイム・バースト」
引き金を引いた際に瞬間的に銃口から発せられる爆炎がロンドの視界に入る。
「なんだぁ⁉」
突発的な力の発動にロンドは驚いた。
「驚くことでもないな。これが本来のコード持ちの力だ」
「すげぇな……」
感嘆といった様子で声を漏らす。
今までとは比べものにならないほどの圧倒的力を発揮する。
「イグナイト・バニッシュ」
二度目の火炎の咆哮。
銃口から迸る炎が走る。
強大な無人を前に巨大な焔は容易く無人を焼き尽くす。
目の前にいた無人は一瞬で灰となる。
炭と化した無人。
次々とアルマリアの炎の餌食となる。
「凄まじい強さだな」
「いや……」
ロンドは感心するが、ユースティスは否定する。
その否定の理由は―――




