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残りは数十体となり、それぞれが一体ずつ倒していく。
更に数を減らし遂には十体を切り、もはや勝利は目前だった。
「よしッ‼意外とやればできるもんだな‼」
「油断はするなと言っただろう。ここ数日見てきたが、すぐ調子に乗るのが悪い癖だなロンド」
「ははっ、悪りぃな。だがよ、これだけ数を減らせることが出来たことでも充分すげぇことじゃねーか?」
「……確かにそれは否めないな」
「だろッ‼」
ロンドは歓喜を上げて露骨に喜びを表した。
そんな彼を尻目に見ていたユースティスは、相も変わらず淡々とした一切の妥協すら許さないといった様子で無人との距離を測っていく。
二人に続いてアルマリアもまた無人の一体を倒して遂にその数は五体まで減った―――
勝利は確実であり確定。
勝ち以外の道筋が見つからな程に完璧な一本道。
四人の顔にふっと余裕が生まれる。
全員が無人の命を狩るために一斉に動き出した。
その時だった―――。
『『『ギィィィイイイイイ―――‼』』』
空に轟く怒号のような異形で聞き覚えのある雄叫びが四人の耳を劈いた。
複数聞こえてきた異様な雄叫びに、目の前の無人を仕留めようとしていたロンドがその動きを止めて驚く。
「うおっ……‼いきなりなんだッ⁉」
振り翳した大剣が空中で止まる。
攻撃を止めて無人から距離を取ると、彼は探るように首を辺りに回して雄叫びのする方に目を向けた。
奇怪音は次第に大きさを肥大化させ、激しさを増していく。
そして、視線の先に異様な砂埃が上がっている場所があった。
その砂埃を巻き上げてこちらに向かってくる何かに気が付いたロンドは、細目で確認するようにその様子をじっと見守っていた。
やがて段々と近付いてくる砂埃。
土煙を上げて立ち込める風上が四人の心臓の鼓動を早くする。
その正体がしっかりと目に映った頃には今までの喜びを吹き飛ばす感覚に襲われて、どん底の絶望を味わうこととなった。
「おいおい、マジかよ……」
ロンドが落胆の声を上げて肩をがっくりと落とし意気消沈した。
気が付いた彼は開いた口が塞がらないといった様子で茫然とその場に立ち尽くす。
彼の視線の先には、先程倒したものと同様の数を保有する無人の群れが、まるで時が戻ったように全てが元通りとなってもう一つ存在していた。
地獄の風景再びといったところだ。
遠目でもその土煙を上げている正体が無人であることを容認出来る出来るくらいしっかりと見つめて確認しなくとも分かる。
視認している瞳に映り込む仰々しくやってくる無人の群れに、急速に水分を奪われ水を欲し喉が渇く。
息は荒くなり、動悸が激しくなる。
それは信じられない光景。
それは目を背けたくなるような受け入れがたい情景。
先刻の爽快感が嘘のように吹っ飛び、大剣を握る手が緩みそうになる。
ロンドの瞳が揺れる。
彼の異常を感じさせる姿を見たユースティスは、目の前にいた無人との距離を離すため真剣で鍔迫り合いをする。
そして、剣で弾いて距離を放し彼に倣うようにして砂埃の奥を見つめその正体を掴もうとした。
視界の奥に映る目を背けたくなる景色が、否応なしにとロンドとユースティスの瞳へと吸い込まれていく。
「あれは……」
戦闘を止めたユースティスも真剣を構える手を抑える。
その場で立ち尽くして動きを止め目を見開いた。
見紛うはずもない。
あれは―――
「どうしたのユースティス?」
彼が立ち尽くしている姿を見たアリアが聞く。
戦闘中に止まることなど普段の彼からはありえもしない行動に不可解を感じた。
「まずいな……」
ユースティスは弱々しい声でポツリと呟いた。
砂埃の正体を掴み取ったユースティスは、苦虫を噛み潰したような表情でその先を見つめていた。
そんな彼のおかしな様子に気が付いたアリアは首を傾げ再び問いただした。
「ねぇ、ユースティス?」
「一旦体勢を立て直す」
突然の発言にアリアは困惑した。
「え……ッ、どういうこと?」
「逃げるということだ。すぐさま離脱しろ。村長を連れてな」
ユースティスはこちらが戸惑っていることなんかお構いなしにそそくさと離脱体勢に入ろうとする。
「状況を説明してくれないと分からないよ‼」
その事態に飲み込めない。
彼の突発的な行動に理解が乏しいアリアは終始困惑していた。
だが―――
「説明している余裕は今のところない。いますぐ離脱出来なければこちらの敗北だ」
重くのしかかる彼の言葉にアリアは生唾を飲み込む。
ずっりと死神に足を捕まれたような感覚に襲われた。
彼は切羽詰まったといった表情でアリアを見つめる。
その何人たりとも自分の意見に文句を言わせない立ち振る舞いに、アリアも自身の不安を捨て行動を優先した。
こくりと首を一度縦に振って頷く。
そして、武器を仕舞うと逃げる準備を行った。
その異常事態を把握したアルマリアが無人を退けてこちらに駆け付けてくる。
「一体何があったというのですか?」
「すまん。説明している暇がない。村長を連れて離脱を図る」
「……」
突然の離脱という言葉にアルマリアは無言だった。
しかし、彼の射ぬかんとする瞳に圧倒されてしぶしぶ承諾する。




