表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/106

error code.56

「どういうことユースティス?」

「詳しくは分からないが……、取り合えず行った方がいいだろう」

「だよな。早くしないと、その「村長ってやつの身に危険が及ぶぜ」


ユースティスは足元で這っていた男に対して聞く。


「それで村長はどこにいる?」

『ホルン街道の方だ‼無人がわんさか溢れてやがるッ‼』

「……ッ」


その言葉に一斉に走り出す。

四人は男を置いて先早に街道へと向かった―――。




♦♢♦



閑散とした無人の街。

風が涼しく吹き抜ける。


遮るものなどどこにもなく。

あるのはもぬけの殻となった街中。


生物の気配など一切感じさせないホルノマリン街がそこにはあった。


街は異様なくらいすっかり静寂に包まれていた。


前日まで賑わいを見せていた道際も、今は人っ子一人いない。


商人あきんと達は足早に逃げ去り、貴族達は早々に街から離れていた。


ここにいるのは――――戦地へと赴く愚か者しかいなかった。


アリア達は男の証言をもとに村長が戦っているという街道へと足を進めていた。


長い一本道をひたすら駆けて行く。

前回来たときは、それほどまで長く感じなかったのに。


今はそれが待ち遠しいほどに遠い。


左右には鬱蒼と生い茂る不気味な森林が視界を奪うような形で仕切りなしに埋め尽くされている。


隙間風が通る隙間すらありもしない。

耳から入る風切り音が真相を凍て付かせる。


自分達の呼吸音が聞こえてくる。

それくらい辺りは異常さを喫していた。


なぜ、このようなことになっているのか。

その答えは、もはや明確さを露にしていた。


そして、走り続けていた四人の視線の先にその答えが辿り着いた。


目の前には弱弱しい背中で必死に無人と交戦している老人の姿があった。


老人は頭から腕にかけて鮮血を流して息切れを起こしていた。


手には武器を握り締めて、無人をこれ以上奥へと行かせないような立ち回りで難を凌いでいた。


おぼつか無い足取り。

ふらふらな体。


腕には気力が抜けている。

手に力が入らないのか。


握り締めている手から武器である巨大な剣が零れ落ちる。


豆腐を切るような切れ味で地面に突き刺さる。


「はぁ……はぁ……」


動悸が激しい。

いよいよここまでか。


力を弱らせても尚戦おうとした自分の体に褒めてやりたいくらいだ。


それくらい自分は躍動やくどうしたと言えるだろう。


他の誰が見ても自分は懸命した。

戦うことを決して恐れなかった。


賞賛に値する人間になれただろうか。

罪を償うことが出来るくらい罪滅ぼしが出来ただろうか。


人を死なせなかっただけでも十分ではないかと。

誰かそう言ってくれ。


そうでなければ自分は、ここまで戦った意味がなくなってしまいそうで怖くなる。


何のために力を賭して戦ったのか。


その証明は今自分の目の前に存在している無人の数に比例している。


数体の無人が悲惨にも消滅した。


この世から消失したのだ。

跡形もなく消し去ったつもりだった。


しかし、実際はどうだろうか?

自分では納得したはずの現実を再び受け入れがたくなってしまう。


それほどに自身の瞳に映り込む現実が心象すら欺いて欺瞞ぎまんを見せようとする。


虚像を見せて終焉したいと錯覚したい。


「……」


願ったもののやはり現実通り上手くはいかずに、その瞳に映るものは欺瞞などでもなく虚像でもない。


そこにあるのはただ一つの真実のみ。


無数に生き渡る無人の群れが目を逸らしたくなるような現実を突きつけてくる。


耳を塞ぎたくなるほど不気味な音を立てて奇妙に動き回る。


素早い動きで錯乱させてこちらの体力を奪う作戦なのであろうか?


存外無人とは頭を使う生物である。


知識という概念自体存在するのかすら怪しい反則的で暴力的なまでの圧倒的な力の体現者を可能とした奇怪な生き物。


生物と言ってよいものなのかと思うが、そんなものに思い更けている暇もない。


一秒でも視線を逸らせば、思考を停止させてしまえば、それが自身の命の終わりを告げそうだ。


それくらい緊迫で張り詰めた吐き気すら催す空気。

支配するは静寂すら飲み込む無だ。


命の駆け引きは既に始まっていた。

圧倒的な敵を目の前にしたときの生物はある程度覚悟を決めている。


それは命のありがたみを実感させる時間を与えるためか。


それとも現世に名残を残させるためか。


はたまた二つ以外の意味があって意を決するのか。

それは定義としては定かではない。


だが―――


そんなことの為に自分は腹を決めてこの場に立ったのかと馬鹿馬鹿しくなる。


そんなものの為に力を使うのならば自分は、この場にいる意味など欠片もなかったはずだ。


自分は―――今この場に立っていることわりを示すために、戦場へと赴いているに違いない。


何のためにここに来たのかを探すのではない。


ここに来た意味こそ生涯を賭して戦うためにこの場所に赴いたのであると。


そう―――自分に言い聞かせる。


この場にいる意味は……自分が決めることだ。

他人になんて決めさせない。


それが自分としての生命の運命さだめなのであると。

老人は自分の心に無理やり言い聞かせた。


思い込めば人間何でも出来る。

すっと目を細める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ