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「未熟か……。力を持つということも割と大変なんだな」

「そうだ。選ばれたからと言って、望まれた道に行けるとも限らない。俺の知る話だが―――力を手に入れた者がいたそうだが……、そいつは結局コード持ちとしての責務を果たすことなく朽ち果てたらしい。何とも愚かな話だ。所詮、力を扱えなかった者の行きつく先など死だけだ」

「恐ろしい話だな。そいつはきっとさぞ悔しかっただろうな。見せびらかせる力がありながらも使役出来なかった……。俺なら選ばれたことに喜んではしゃいじまいそうだぜ。力が扱えなかったら意味がないけどな。ハハッ――――」


へらへらと笑って言って見せるロンドに、ユースティスは嘲笑気味に笑って言った。


「確かにな。力を得ることが出来れば、全員が喜びを露にするだろうな。だが、どうだ?実際コード持ちとしての俺達を見て何を思う?」

「……そうだな」


ユースティスの問いにロンドは応えることを躊躇う。

何と答えればいいのか。


ロンドにはすぐには思いつかない。

未だに戦闘を続けているアリアに、彼女から視線を外してはならないと思いて見つめ続けた。


「まぁ……、いいとは思わないよな」

「ふっ―――だろうな。誰もいいとは思わないはずだ。人の為に尽力を尽くして、尽くして、尽くした先に―――一体何があると思う?何一つ変わらない日常だ。無人を倒しても、倒しても決して減ることはない。むしろ俺達の同胞の数が日に日に減っていくだけだ。そんな世界に何の意味があるのだろうな?いや、俺達がいる意味は到にないのかもしれないな……」


どこか遠い目をしたユースティスにロンドは、彼が抱える重荷が存在しているということを感じ取った。


だが―――


「確かにいいとは思わないが、別に悪い事でもない。プラスに考えていけば、力を得るということはイコール誰かを救えるという事にも繋がるわけさ。誰かの為になるなら、力を得たことにも意味はあるんじゃないか?」


払拭するかのようなロンドの言葉に、ハッとしたユースティスはどこか道が開けた気がした。


その時―――


「やぁぁぁあああああ‼」


アリアの甲高い声と共に重たく倒れ伏した一体の無人が雄たけびを上げて崩れ落ちた。


「どうやら終わったようだ」

「本当に手を出さなくてもよかったみたいだな」


安堵の息を吐くロンドとは対照的にユースティスは、当然といった表情でアリアの後ろ姿を見つめる。


「これくらいは倒してもらわないと、これから先が心配だ」


倒し終えたアリアの元にアルマリアが駆け寄る。


「大丈夫ですかお嬢様?」

「えぇ、大丈夫。遅くなったわ」

「そんなことはありません。よくぞご無事で」


健闘したアリアに賞賛を与える。

そんな彼女にユースティスとロンドも近付いた。


「随分とてこずったようだな」


倒し終えたアリアに辛辣な口実を述べる。


「これでも頑張った方なんだから誉めるなりなんなり出来ないの?」

「これだからお嬢様という生き物は困るな。すぐさま褒めてほしいと思いたがる」

「嫌な言い方ね本当に……ッ‼」


ユースティスの皮肉気な言い方にアリアは倒した余韻すら忘れて心地よくない気分にさせられる。


素直に褒めてはくれない彼に、不貞腐れてひねくれた態度を示した。


「いいじゃねーか。嬢ちゃんはよく健闘したさ。ここは素直に褒めておくべきだ」

「ふん……」


そんな彼女に助け舟を出すかのように、ロンドに救済されたアリアが笑みを浮かべる。


満面の笑みを向けられたユースティスは視線を逸らすようにそっぽを向いた。


勝利の余韻に浸っている四人の元に閑散とした空気が漂う。


無人が立ち去った後の空間は静かな風景が立ち込めている。


風のせせらぎが空気を震わして音を立てる。


村人の姿は消え、どこにも痕跡がないように思われた。


そうして風に漂う静寂に満ちた音波を耳で感じ取り、肌を伝う冷たい空気が辺りを支配していく。


全員が終わりを告げる鐘の輪唱に聞き惚れようとしていた――――その時だった。


「……」


不意に何かに気が付いたユースティスが突然明後日の方角に目をやった。


「どうしたのユースティス?」

「……?」

「ん?」


彼の視線の変化にアリアが気付いて首を傾げる。

アルマリアとロンド二人も彼女に続いてユースティスを見た。


彼は遠くに視線を預けてじっと一点を見つめていた。

彼に釣られるように全員がその方角に目をやっていると、うっすらと遠くから何か黒い影がこちらに向かって近づいてくる。


「なんだ……?無人か?」


ロンドの言葉にアリアとアルマリアが臨界体制を取る。


「いや、違う。あれは――――」


ロンドの見解を否定してユースティスが視線を鋭くする。


黒く動く影の正体が徐々に分かってくる。

その正体は――――


『大変だ‼村長が一人で戦っている‼』


一人の男だった。

どうやら遠くに逃げていた村人がこちらに走ってきたようだ。


彼は息を切らして言葉を漏らした。


「なんだと……ッ。今、何と言った?」

『村長が戦っているんだ‼早くしないと死んじまうよ‼』


無きすがるようにユースティスの足に這って懇願してくる男に、全員の顔が強張る。

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