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彼女の瞳を見て真剣な表情で聞く。
全てを射抜かんとする威圧的で好戦的な瞳を向けられたアリア。
だが、アルマリアの考えとは裏腹に、
「殲滅するしかないわ。人々が怯えているのだもの。私達は狩るために外に出たのだから」
意を返して、アリアは凛とした態度で言った。
その圧倒される態度にアルマリアは一瞬呆ける。
だが、すぐさま体裁を取り繕って、ふっと笑った。
「お嬢様ならそう言うと思いましたよ……。ですが、宜しいのですか?もう一度問いますが、彼らは罪に溺れた人間ですよ?」
「関係ないわ……。そこに困っている人が居るのなら―――この街に危険が及んでいるのならば、助けるのが道理だもの。私達は、そのためにこの街に来たんだから」
「分かりました……。ならば、この身はお嬢様のために使いましょう。私に出来るのは、お嬢様の命を守ることですので―――」
仕える身のアルマリアとしてはこれ以上の幸せは無いと実感する。
彼女の為にこの命を使うのが自分の使命であると心に誓って。
そんな彼女の忠誠心を後ろで聞いていたロンドは、不思議な光景に出会っていると思っていた。
人が体裁を取り繕うのでさえ困難な無人が生き住まうこの世界で、彼女はあろうことか目の前の少女に大切な自分の命を彼女のために使うと豪語しているのだ。
これが不思議でなくて、なんと言うか。
ロンドには言葉が見つからなかった。
自分には目の前にいる彼女達の理解が追いつかなかった。
到底出来ないことだと。
自分の命が死ぬほど愛おしく大切になる世界に生きているというのに。
彼らは死ぬことが怖くないのだろうか?
思考に火花を灯して考えが頭を回る。
巡る思考が擦り切れる。
理解の範囲内を超えた彼らに、輪舞は住まう世界の遠さを知る。
まるで別次元の存在に思える彼らの後ろをひたすら付いて行った。
「話はそこまでだ」
と、ユースティスの声に意識を覚醒させる。
「どうやら俺達の目的の物が現れたらしい」
彼が視線を前に向けた。
後に釣られるように全員が一斉にそちらに注目した。
目の前には今まさに人を襲わんとする一体の無人の姿があった。
「行くぞ」
ユースティスが低い声で一言発すると、先んじて既に手に仕込ませていた漆黒の色に包まれたカードを取り出して詠唱する。
「エラーコード……」
カードを前に掲げ続けて言う。
「燃えろ―――私怨」
彼の詠唱に反応するかのようにカードに瞬く間に紅炎の焔が灯る。
燃ゆる炎に包まれたカードを見つめてユースティスは、姿形を変えていくカードを水平に振るう。
すると、赤く光る焔は消え失せ、後に残ったのは不気味に彩られた漆黒の剣だった。
瞬間的に訪れる静寂。
その一瞬の静寂のうちに。
彼に続くようにして全員が一斉に動き出した。
一足先に武器を取り出していたユースティスが襲われそうになっている人の前に立ちはだかり、目の前に来る白色に染められた足爪を刀身で受け止めた。
『ヒッ―――⁉』
間一髪のところで助けられた男は、口から出そうになった悲鳴を手で抑えてその光景をじっと見守っていた。
「統率の取れていない無人は敵ではない」
と、ちらりと他にもいた無人に目を当ててユースティスは足爪を弾き飛ばした。
周囲を確認するため一瞬視線を外すと、無人の数は自分の獲物を含めて四体といったところだ。
それぞれの無人がバラバラに行動しているところを見る限りでは、脅威になるような敵ではないと判断した。
本来無人は単独行動を取るような習性はない。
元来奴らは集団行動を取り、人間を蝕んでいく。
単体でも十分厄介なのだが、それより厄介なのが団体行動で常に動くため少人数で襲われた場合、生命の維持は絶望的になる。
だが、今回はそう言ったことは起こらなそうだ。
ユースティスは目の前にいる無人の注意を惹きながら他の三人の位置を確認する。
「全員が無人を倒せる能力を極めている以上、まずは目の前の無人を倒す事に専念しろ。でなければ、敵は単体とはいえ油断を食らうことになるぞ」
ユースティスの忠告を受けた他の三人は、それぞれ街の人間を襲っている無人の目の前に駆け出して対峙する。
「ベストコード」
アルマリアは無人との距離を詰めつつ、袖から白銀に飾られたカードを手に持ち詠唱を口にした。
「燃え尽きなさい……私怨」
続けられた言葉に反応してカードから発熱する。
灼熱の焔がカードを包み、その姿を変えていく。
手を前に出しカードを掲げる。
そして、紅炎の炎が燃え尽きると、手には煌びやかに輝く白銀の銃が握られていた。
手に握った銃を前に出して、村人に迫りくる無人の一体に弾丸を一発放った。
鈍い銃声と共に、凄まじい速さで放たれる螺旋回転した弾丸が無人の体に当たり、その衝撃で無人が大きく仰け反った。
キンッ―――という硬い音がアルマリアの耳に響き渡る。




