error code.54
「やはり硬いですね」
弾かれた弾丸の行方を目で追いながら、アルマリアは襲われそうになっていた村人に声を掛ける。
「あなた大丈夫で―――」
『ヒィィイイイイイイッ―――⁉』
助けた村人の男は心底怯えた様子でアルマリアを見つめた後、震える腰を上げてその場から逃げるように立ち去っていった。
「……」
助けたのに自身に驚かれては労力の意味がないと、アルマリアは少し失望して逃げる男の背を見つめた。
彼はその先にいたユースティスの元にいた男と一緒に足早に逃げて立ち去っていく。
どこかで見たことのある男達が情けなく無人に背を向けて逃げていく姿に。
何とも頼りにならない情けない男であると思っていると、
「ふん―――」
その一部始終に巻き込まれていたユースティスが、一旦無人を大きく弾き飛ばして体勢を崩させこちらに近付いてきた。
「おい、先程の人間に見覚えがあるのか?」
そう言って、彼はアルマリアに視線を向けながら問いただししくる。
「なぜ、今聞いてくるのですか?」
「お前が先程の男の背中を見つめていたからな」
「見ていたのですか?変態ですね……」
「別にお前を見ていたわけじゃない。俺もあの男達には面識があったからな。注意して見ていただけだ」
「あの男……達?どこで見たんですか?」
「地下でだ」
その言葉にアルマリアはハッとする。
確かにあの男達は見覚えがあると思っていたが……。
そういうことだったのかと、アルマリアは今ようやく理解した。
「なんだ?何か言いたげだな?」
アルマリアの表情が一瞬曇ったのをユースティスは見逃さなかった。
なんでもこの男は見通してくるなと、アルマリアは冷や汗を流す。
「そう言えば―――言い忘れておりましたが、先程トンネルを張り込んでいた時に、男二人組がこちらのトンネルから出て来たのですが……」
「……そういうことか」
どこか納得のした顔の紳士に、淑女はホッと安堵する。
何しろ通信不調で伝えきれなかったとはいえ、すぐさま言わなかったことに―――いや、正確にはすっかり忘れていたことに後ろめたい気持ちがあったからだ。
何か思案顔している彼に対してアルマリアは言葉を続けた。
「それが先程の男達だったことを今思い出しました」
「———なるほどな。今、話が繋がった気がする。どうやらこちら側の遺跡とそちら側のトンネルは繋がっていたということだろう」
「どうして、そう言えるのですか?何か根拠でもあるのですか?」
彼の一人で納得した顔に、淑女は少しむっとして問いただした。
「大方同じ方向から出ないように作られているのだろう。まさしく怪しい地下だったということだ」
「同じ方向には出ないように作られていた?何のためにですか?」
「可能性は複数考えられる。だが、その中でも有力なのが……、俺達が入ってきた地下に続く遺跡と、アルマリア達が張っていたトンネルの二つが一本の道となっているということだ。そうすれば説明がつく」
つまり彼は、こう言いたいのだ。
遺跡は入り口でトンネルは出口であったと。
もしくはその逆。
しかし、アルアリアはトンネルから出てきた男達がある発言をしていたのを聞いていた。
「ですが、男達はトンネルから出て来る時、こう言っておりましたよ―――この道を使えば追いかけて来れないはずだ、と。彼らの証言が正しかった場合、道は一本ではないという可能性の方が大きいです」
「ならば、その証言自体が嘘ということ。または俺達の考えていることの片方が正しく片方が嘘、もしくは両方とも真実という三つが考えられるだろう」
「両方とも真実……ですか?」
「つまり、男達の証言が正しく他にも抜け道が存在していたということだ」
アルマリアは珍しく話に付いて行けないといった様子で困惑していた。
そんな彼女に分かりやすく説明を加えた。
「逆の立場になって考えてみろ。俺だったら、あの大量に密輸したマグナタイトを抑えられた時———いや、知られた時の対処くらい何通りにも考える。当然、抜け道くらい作るだろう。だが、一本だけでは足りないな。複数抜け道を作らなければ、意味がない。すぐにバレないようにするには、あらゆる可能性を秘めていないと対応の余地がない」
そこまで説明を受けて、ようやく彼女は理解の範疇に入った。
「ふっ―――お前も相当疲れていたのだろうな。すぐさま理解が追いつかなかったところを見ると、分かりやすい」
「煩いですね」
指摘された内容がやけに的確だったので、アルマリアは反論を混ぜつつ内心はどきまぎしていた。
彼の言う通りここに来てから少し体に疲労の様子が見られていた。
特に肩が痛く、銃を上げている姿勢が辛かった。
「何なら、代わりに無人を倒しておいてやろうか?」
「結構です。私の力で十分倒せます。疲労くらい一体の無人ではハンデにもなりませんよ」
不貞腐れた淑女はそう言うと、迫り来る無人に三発の銃弾を放って距離を保つ。
近付かれれば危険度が増してしまうので、いかに無人の領域に入らないかが勝負のカギとなる。




