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扉を閉めたユースティスが一刻も早く外の現状を知りたいと、駆け足で地下を抜けていく。
その道中で―――
「結局、何が分かったの?」
「お粗末な頭では理解出来なかったか?」
「今すぐその頭を割ってやりたい気分になった……ッ」
「冗談だ」
「ユースティスの冗談は分かりにくい……」
少し拗ねているアリアにユースティスが言う。
「その話は後でする。今は一刻も早く地下を抜けるのが先だ」
「……分かった」
大人しく言うことを聞くアリア。
二人は、しばらく駆け足で地下の廊下を抜けていった。
やがて視界の先に光が入ってくる場所が現れた。
二人は更にスピードを上げて地下を抜ける。
光に目を覆い隠して、目を見開く。
どうやら街の方から喧騒の声が聞こえる。
「くそッ……‼」
早くしなければ、被害は増す一方である。
早急に取り掛かろうとしたその時―――
「……」
ユースティスは徐にポケットを探り出すと、何かを取り出した。
彼の手にはデバイスが握られている。
「どうした?」
声を発すると、向こう側から彼以外の声が聞こえてきた。
『ようやく出てくれましたね……』
「ということは、通信が出来なかったということか……」
『心配しましたよ。お嬢様の身に何かあったのではないかと―――』
「すまない……。今は時を争う」
『えぇ、分かっています。街に無人が現れたんですよね?』
「そうだ」
そう言って、彼は街に目を向けた。
『私達は、どうすればよろしいですか?』
「取り合えずこちらに来てくれ」
『承知しました』
通信相手のアルマリアから承諾の意をもらったユースティスは、彼らとの合流を図るためにしばし待つ。
「どこの世界も結局は無人に侵食されるんだね……」
誰かがポツリと呟いた言葉にユースティスは反応する。
その声の正体はアリアだった。
彼女は街から聞こえてくる悲鳴に耳を傾けてその光景を目に焼き付けた。
無人の被害が無い街として有名だったはずなのに、現の光景は噂とは真逆の風景になっていた。
静かに見つめているアリアに、ユースティスはじっと彼女を見つめる。
儚そうな瞳が印象的だ。
時が経つ感覚が鈍るかのようだ。
そうして一時の不思議な感覚に襲われていると—――
「お待たせしました」
「なんだぁ?どうかしたのか?」
駆け足で来たアルマリアとロンドの二人にユースティスが言う。
「いや……、何でもない。それより無人を倒しに行く」
彼は全員の目を見た後、颯爽と駆け足で街へと走り出した。
それに続いて他の三人もユースティスに続いて街へと繰り出す。
街からは女性の悲鳴や喧騒が聞こえている。
まだ四人がいる位置から無人の姿は確認出来ない。
「ねぇ、ユースティス」
その時、ふっとアリアが声を出した。
彼女に名前を呼ばれたユースティスが返事する。
「なんだ?」
「さっきの答え……、教えてくれないの?」
「……」
「さっきのとは?」
アリアの言葉に聞いていたアルマリアが首を傾けて疑問符を浮かべた。
「先程、地下にいるときに村長と会ったんだが……」
「村長と……、ですか?そう言えば、全然見かけませんでしたね」
「あぁ、地下で会ったんだがな……。そこで思わぬ事実が浮き彫りになった」
「思わぬ事実だと?一体何があったんだ?」
話を聞いていたロンドが代わりに問う。
「どうやら―――この地下には俺達の武器として使用される鉱石が大量に密輸されていた」
「そうなんですか……」
「本当か?」
その事実にアルマリアとロンドは息を呑んだ。
「私にはそれが分からないんだけど、どういうことなの?」
一人だけ分かっていないアリアが頭にはてなマークを浮かべていた。
そんな彼女にアルマリアは走りながら答えた。
「お嬢様は、私達の武器が何で作られているのかご存知ですか?」
「武器の成分……?分からないわ。これはお母様の形見だし……、考えたことも無かった……。教えてアルマリア。何で出来てるの?」
「マグナタイトと呼ばれる成分で構成されているのですが、これが無人を破壊する為に使用されるものです」
「マグナタイト?聞いたことないわ」
「無理もありません。知らなければ、滅多に私達の耳に入ることはないですから。そして、その成分の元であるこの地の下にあるマグナタイトが無人を寄せ付けないようにしていたということです」
彼女の言葉に、アリアはハッとする。
「アルマリアの説明を聞いてようやく理解したわ……。そういうことだったのね」
「ある意味無人にとっては警戒すべき天敵であるが、故に、無人は敵対意識を向けつつこの街に近寄ることが出来なかった。ましてや大量にあちこち散りばめられてあることで結界のように張り巡らせれていた。ですが、大量に手に入れることが出来たのはこの世界にある不可侵条約に元ずく法を犯していたからです。密輸と言うのは悪い事ですので……」
「密輸……」
「この話を聞いてどうしますかお嬢様?無人をこのまま放っておくという手も、少なからずあると思われます」
アルマリアは真摯に聞いている彼女に現実を突きつける。
彼らは救うべく命であるというのか。
自分達が命を懸けて戦うべくに相応しい相手なのかと。
そう―――問いかける。




