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照明の少ない地下でアリアは小さな体を使ってユースティスとはぐれないように歩き続けた。


中を見れば、最古から建て綴られた風情ある遺跡の風貌を保っていた。


今にも崩れそうなヒビが芸術的に線を引いていた。

地面を踏みしめれば分かる確かな感触。


神秘的な雰囲気を全面に出した通路。

その通路は奥深くへと続く異世界へと扉を開くかのように。


暗がりの向こう側に、引き摺り込まれそうな勢いをその身に宿していた。


意を決した二人は、そのまま前を行く男二人同様に平然とした態度で奥地へと進んで行った。


足音が出ないよう静かに歩を進めていく。

どこまでも続きそうな地下遺跡の空間。


この奥には一体何があるのか。

ユースティスが考えていると、不意に前を行っていた男達が立ち止まったのを確認した。


すっと、アリアの前に手を出して出方を見る。

地下の最深部へと辿り着いたのだろうか。


次の瞬間ーーー

重い扉がゆっくりと開くような音が聞こえてきてユースティスとアリアは唾を飲む。


しばらくその場に立ち止まっていると、再び先程と同じ音が耳に入ってくる。


アリアから手を差し引いたユースティスは、顎に手を置いて今の音について考えていた。


恐らく見立てどうりなら、この先に扉がある。

それも開閉式の扉だ。


「……」


彼は無言で固まった。

その様子を見ていたアリアが聞く。


「どうしたの?」

「……この先に扉があるのが分かった。だがーーー」


と、言葉を濁す。

息が詰まったように口から言葉が出なくなるユースティスに再度アリアは聞いた。


「何かあるの?」


彼の顔を下から見るようにして見つめる。

すると、ユースティスはアリアの目をチラッと見つめ視線を先へと向けた。


「迂闊に入るのは危険過ぎる」

「どうして?」

「万が一襲われたら密閉空間だ。最悪ここで終わる可能性もある以上踏み込むわけにはーーー」


と、そこまでユースティスが言った言葉をかき消すようにアリアが声を発する。


「ここまで来たら、とことん進んじゃおうよ‼︎」

「……」


ユースティスの馬鹿を見る目がアリアに突き刺さる。

しかし、彼女はユースティスの目を気にすることなく言った。


「ここで入らなきゃ、後悔するかもしれないよ?」

「ここで入って後悔する可能性もある」


互いに意見のぶつかり合いだ。

こうなった以上どちらかが論破されるまで終わらない。


いつもならーーー


「……だが、ここで後悔するなら入る一択か」

「……っ‼︎」


いつもならここで喧嘩が始まるのだがーーー

今日はユースティスの方から先に折れてくれた。


それも存外早く。

これは本当にユースティスかと疑いたくなる。


「なんだ?そんなに譲ったのが意外だったか?」

「そ、そうだね…っ。いつもなら喧嘩してるところだからね……」

「ふっ……」


思わずユースティスの口から笑みが溢れる。

こんな状況だというのに笑みが溢れてしまったことにユースティス自身口元を覆って内心驚いていた。


「中に入るか」

「うん……」


自分では言ってみたもののいざ入るとなると、途端に緊張し始める。


アリアは息を飲んでユースティスの背後に隠れながら慎重に進む。


そして、目の前に現れた扉をじっと見つめた。


「開けるぞ」


ユースティスが扉に手を掛けてゆっくりと開けた。

鈍く重たい音が聞こえてくる。


扉を開けた瞬間ーーー

中から慌てた声が聞こえてきた。


ユースティスもいつでも武器を出せる状態で構えながら扉の奥から姿を現す。


『誰だ‼︎』

『何しに来たッ⁉︎』


その声は先程前を行っていた男達二人から発せられたものだった。


彼らは後ろを振り返り入ってきた者を確認しようとする。


二人の緊張しい顔がアリアの瞳に映り込む。


「……」


質問されたユースティスは無言のまま男二人に視線をぶつけた。


鋭い視線を向けられた男達は思わず足がすくんでしまう。


ユースティスの殺気とも取れるような凄みのある瞳に見つめられ、体が麻痺したように動けなくなる。


「ここで何をしてる?」


彼らを一瞥したユースティスが問い掛ける。

男達は怯み警戒を露わにしながら問いかけに応じた。


『俺らが何してようがあんたらには関係ないだろ‼︎』

『そっ、そうだ……ッ‼︎すっこんでろ‼︎』


慌てた様子が板についている二人をユースティスは大胆不敵な笑みを浮かべて嘲笑した。


『何がおかしい‼︎』

『笑ってんじゃねーよ‼︎』


激昂しさらにヒートアップした二人がユースティスを見つめて言った。


「いや何、笑いたくもなるさ……。まさか、こんなところで言い訳をしようとしているとは思わなくてな。浅はかな考えでこの場を乗り切ろうとはな愚直なーーー」

『……ッ‼︎』

『何だと‼︎』

「ものを言われてすぐに怒りが昇るのも愚行そのものだ。少しはまともな話は出来ないのか?」


挑発とも取れる彼の物言いに、男達二人はさらに怒りが頂点に昇る。


『言わせておけば……』

『どうする?』


何やらブツブツと言い合い始めた二人にユースティスはアリアに少し下がるように命じる。


不穏な空気を鋭敏に感じ取ったユースティスなりの行動だ。

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