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今日一日中ここにいるということは、実質この場から一歩も動かないことを示していた。


その辛さを果たしてこの横にいるお嬢様が耐えられるのだろうかと。


考えていたユースティスだったが、案の定彼女は既にじっとしていられないのかソワソワし始めていた。


お嬢様が一定の場所に留まれない性格なのをユースティスは把握していた。


幼少期から彼女のことを見ていた彼だからこそ知っている。


ここにいる少女にじっとしているということが出来ないということを。


「ねぇ、ユースティス」


そして、案の定彼女は耐えきれなくなってじっと様子を見守っていたユースティスに話しかけて来た。


だが、彼はあえて無視をすることにした。

今話したところで、どうせ彼女から発せられるのはロクな内容でないことぐらい彼は理解していた。


無視することで彼女が話すやる気をなくす作戦に至ろうと考えていた。


「ねぇってば」


まだ話しかけてくる。

彼女は今日行うことについてしっかりと理解しているのか不安になった。


二人きり故に話しかける相手がユースティスしかいないということに。


ただ静かに一点を見つめているユースティスが、明らかにこちらの声が聞こえているにも関わらず無視していることを察知したアリアは、頬を膨らませて拗ねてみせた。


反応を示さない彼をつまらなそうに見つめる。

いじけて話しかけなくなった彼女に紳士は安堵する。


彼女が話しかけなくなったことで観察に集中出来るようになった。


そのまま数時間が経過したーーー。


静寂となった空間で張り込みを続ける彼だが、村長と青年の他に不審な人物が現れる様子は今の所ない。


ずっと見続けているのも体力を使う。

ただその場にいるだけでも相当負担が掛かるのに、お嬢様と一緒となればそれは尚更倍増する。


目が疲れる前にアリアと交代したいものだが、彼女がいつまでも同じ光景を見ていられるかどうかが不安でそれすらなかった。


だからこそ彼は交代することを選ばす一人で張り込みを続けることにした。


「ふぅ……」


ずっと息を吐いて弛緩する。

と同時に、


「つまんない」


というアリアの声が聞こえてくる。

やはり耐えきれなくなったアリアがまたも話しかけてくる。


さすがに二度無視をするのも我ながらどうかと思ったので今度は問い掛けに応じた。


「なんだ?もう飽きたのか?お嬢様は耐え凌ぐ人物であるべきだと思うんだがな」


挑発口調で彼女にぶつける。

そうすることでやる気を引き出そうという魂胆だ。


ちらりとアリアの顔を伺いつつ様子を見ていた。

しかし、当の彼女はまるで自分がお嬢様であることを忘れたかのような顔でこちらを見つめてきた。


「はぁ……」


キョトンとした顔の彼女に溜息を吐く。

このお嬢様は都合のいい時だけお嬢様を辞めるようだ。


「そんなことより何か進展あった?」

「今の所何一つない。我慢が肝となるだろうな」

「う〜‼︎」

「駄々を捏ねるな」

「そんなこと言ったってつまらないものはつまらない‼︎」


未だにつまらないと抜かすアリアにユースティスは三度重たい溜息が出る。


これはどうしたものかと考えていると、視界の端に人影のようなものが見えた。


すっと目の色を変えたユースティスの反応に、アリアは息を飲んで見守った。


彼の異変に気が付いた彼女は遂に動き出したということを悟った。


彼の視線の先にはこの街の住人と思わしき若い男二人が何やら周囲を警戒しながら目の前に現れた。


明らかに挙動不審である。

辺りを見れば、夕暮れ時だ。


陽が落ち始めている頃合い。

出方としては万全を喫するだろう。


様子を見つつユースティスは出る時期を図る。

やがて、男二人は辺りに警戒を張りつつ森の奥地へと入って行った。


彼らが行く場所は前にユースティスが行ったことのある地下へと通ずる遺跡がある。


「行くか……」

「いよいよだね」

「あまりはしゃぐな。バレたら何をされるか分かったものじゃない」


急こうとするアリアを手で制してユースティスが先導を行く。


「慎重に行く」

「……(コクッ)」


黙って頷いた彼女は息を殺してユースティスの後ろをついていく。


二人は辺りに警戒を張りながら地下に通ずる遺跡へと一歩足を踏み入れ、慎重に進んで行った。


前方からは男達の話し声が微かに聞こえてくる。

おかげで彼らがどの位置にいるのかしっかりと把握出来る。


視線の僅か先に彼らが視認出来る距離にいるということにユースティスは息を呑む。


何の話をしているのか興味がある。

しかし、話の内容は聞き取ることが出来ない。


彼らに近付けばいい話だが、いかんせんそれは無理な話だった。


何故ならこれ以上近付けば、さすがに勘付かれる可能性があるからだ。


そうなってはこちらとしても対処のしようがない。

逃げることは出来るが……。


ここまで来た以上、早々と引くわけにはいかなかった。


ユースティスは眉をひそめてなりを潜める。

遺跡の奥深くへと入っていく男達の後を必死に追っていった。


中に入るのはユースティス自身も初めてなので足がおぼつかない。


地下とあって視界は薄暗く唯一の光とは仄かに光る紅炎に満ちたロウソク灯が淡く揺れ動くだけ。

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