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仕方なく自分で何かを作ろうかと考えていたユースティスだったが、視線の先に突然ルニーが現れた。


どういった原理で現れたかと疑問に思っていると、どうやら彼女は食材の下準備をしていたらしく、ユースティスが今いる位置からではちょうど見えない場所にいたらしい。


それが原理の源となっていたようだ。


だが、ユースティスがいることに気が付いていないのか。

彼女は夢中で下準備をしている。


その手が一度も休まることなく下準備が滞りなく進んでいると、準備の途中で一度視線を上げたルニーが誰もいないと思っている食堂を一瞥する。


だが、そこにいないはずのユースティスがいたことにルニーは驚いて手を止めた。

こちらに気が付いた彼女は、慌てた様子で挨拶をしてきた。


「えッ‼あっ⁉︎ユースティスさん⁉おはようございます‼︎朝早いんですね……‼︎少々お待ちください。今作りますのでーーー」


と、危なかっしさを前面に出したルニーが料理作りを開始する。


せっせと作ってはいるものの、大変見ていて不安になる。


集中して作っているルニー。

だが、やはりその手先は不格好だ。


突然の訪問者に動揺しているのだろう。

ユースティスは溜息を吐きつつ彼女の元に近付くと、おもむろに包丁を握り料理の手伝いをした。


その様子にルニーは心底驚いた様子で彼を見つめた。

野菜を切っていた手が止まる。


「ユースティスさん……?」

「一人で作るのは大変だろう?手伝ってやる」

「そんな‼折角泊っていただいている方にそんなこと……」

「一人でやるより断然早いだろう。心配するな。料理はしている」

「そういう問題では……」

「男の親切は素直に受け取っておくべきだ。でないといざという時後悔する」

「……」


確かに男手を借りれるなんて滅多にない。

動揺していたルニーは冷静に考える。


いざという時のための訓練としてはいい事なのかもしれないと思ったルニーは、結局ユースティスを頼ることにした。


「あっ、ありがとうございます‼」


そう言って、彼女は料理作りを再開した。

彼女の姿を見てユースティスも包丁を器用に使って魚を捌いていく。


野菜を切る音が食堂に木霊する。


普段はこんなことをしないユースティスだが、何故だが今日は無性に手伝ってあげたくなった。


ふと、ルニーを見る。

一生懸命作っている彼女の姿にとある影が重なる。


もしかしたら夢に出てきた妹とどことなく似ていたからかもしれない。


彼女が一生懸命作る姿と、妹が必死に食事をする横顔が似ている。


そんな理由で料理を一緒に作ることになるとはと。

内心自嘲してみせた。


「どうしました?」

「いや、なんでもない」


と、笑ったのを誤魔化してユースティスは料理に集中した。


ものの数分で料理は完成し、自分の分を皿によそって適当に椅子に座った。


ルニーは他にも作るものがあると言って厨房に戻ってしまった。


その直向ひたむきな姿に関心を受ける。

きっと妹が生きていたらちょうど彼女と同じ年頃なのだろうか。


気になるが、今は食べることに集中することにした。

自分で作ったので自分好みの味となっている。


舌にくる味がユースティスの味覚を刺激する。

食べ物が美味しい。


宿の外装はボロいが味は断然美味い。

この食事で今日一日を乗り越えられるそんな気分だ。


見事に平らげたユースティスは食器を片しに厨房に向かった。


厨房では未だにルニーが食事を準備していた。

忙しそうな彼女に変わって自身の食べた皿を綺麗に洗い流す。


「あぁ‼︎いいですよそんな‼︎」

「いや、忙しそうだったからな。こっちでやっといく」


と、食器を洗い流したユースティスはそそくさとその場を後にする。


「ありがとうございます‼︎」


ルニーがお礼を言ってくるのを手で反応し返して食堂を後にした。


食堂を去って数秒後ーーー。

いつも巻いているバンダナを巻き忘れたのか。


眠たい目を擦りながら盛大に欠伸をするロンドがこちらに向かって歩いていた。


眠たそうにしている彼がこちらに気が付いて声を出した。


「なんだ兄ちゃん。随分と早いな。ふわぁ〜」


寝不足なのか欠伸を二度したロンド。

だらしない格好で歩いている様を見ていたユースティスは、溜息を吐きつつ言った。


「昨日はよく眠れなかったか?」

「いや、そんなことはねぇよ。心地良かったぜ」


なら何故欠伸が出るのかという疑問を口に出そうとして止める。


「しっかりしてほしいものだな。いつ無人が動き出すかも分からない状況だというのに」

「神経が図太いのさ。繊細な人間はこの世界で生きていくには辛いぞ?」

「誰が繊細だ」

「兄ちゃんのことさ。何かと敏感に無人の様子を伺っていたみたいだがーーー」


その言葉にユースティスは、


「気付いていたのか」


と、バレていたことに驚きつつロンドに言った。


「そりゃ、あれだけ警戒心剥き出しにしてればな。殺気がダダ漏れだ。無人も馬鹿じゃない。殺気を放った人間が一人か二人いれば迂闊に手も出さない」

「確かに奴らは意外と人間の殺気に敏感だ。それは実証済みだ」

「そうなのか。さすが兄ちゃんだな。侮れないぜ」

「問題は殺気を放ったらバレるということにある」

「そうだな〜。至近距離で放ったところで問題はないが、遠距離からこっそり狙おうとしても殺気を放っていたら無理だ」


ロンドは寝起きにも関わらず淡々と話を進めていく。


「だが、至近距離で狙えば当然奴らの射程範囲内に入ることは必須。ともすると、死ぬ確率もその分高くなるということだ」

「本当に厄介な相手だぜ……。無人って奴はよ」

「だからこそ倒し甲斐があるというものだ」


口角を引き上げたユースティスをロンドは見逃さなかった。


「兄ちゃん以外と破壊衝動あるのな……」

「何故そう思う?」

「今笑ってたぞ」


指摘されたユースティスは口元に手を当てて確認する。


「まぁ、何にせよ。俺は飯を食べてくる。腹が減って仕方ねぇ」

「そうしろ。蓄えが必要だ」


手をひらひらと向けて食堂に向かっていくロンドを見送った。


部屋に戻る途中で先程ロンドが発した言葉を思い出した。

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