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不意に女性が声をあげて言った。


『あっ‼︎そう言えば、建物とかじゃないけどーーー変なトンネルはあった気がする』


重い荷物を抱えているはずなのに微動だにしない彼女が思い出したかのように言った。


(トンネルーーー?)


違和感を覚えたアルマリアが聞いた。


「それはどこで?」

『えっとね、この道を真っ直ぐ言って二つ目の角を右に曲がった右手の森林に、人が抜けれるくらいの小さなトンネルがあったんだよね』

「なるほど……」

『もしかしたら、あなたが探してるのに近いかもね』


はにかんで淑女を見つめる。

笑顔を向けられたアルマリアは優しく返して言った。


「貴重な情報ありがとうございます」

『それにしても……どうしてそんなことを聞くの?』


と、当然不思議に思った女性が問いかけるがーーー


「いえ、私にもよく分からなくて……、知り合いがそう言った建物に興味あるとかなんとか言ってまして、それで探していたところなんですよ」


平然と嘘をついたアルマリアだったが、それに気付くはずもなく女性は笑い飛ばす。


『ははっ、なにそれ面白い。まぁ、私が知っている情報はこれくらいかな?なにを調べているのか分からないけど、あまり危険なことしない方がいいよ。友達にもちゃんと注意しておくんだよ?』


左目でウインクをした女性がアルマリアに背を向けて立ち去っていった。


その背中を見つめてアルマリアは思う。


「きっと、私より上がいたならあの方のような素晴らしい方だったのでしょうか?」


一抹の疑問が脳裏によぎるが、思い更けた淑女は視線を切って情報を頼りに足を進めるのであったーーー。



老人の情報を頼りに西に進んでいくユースティスの姿がそこにはあったーーー。


西に進むに連れて街の雰囲気はガラリと変わっていく。


活気ある街並みは急変し、上品な羽織が特徴的な貴族の格好をした住人が増えていった。


富裕層が住まう街なのかとユースティスは思った。

建物も不思議と豪勢になっていき、頑丈な作りのコンクリートで建てられた建造物が大々的に敷地を貪り尽くしながら佇んでいた。


元より豪遊を知らないユースティスからすれば、目の前にある建物には嫌悪感しか抱かなかった。


自分の知らない暮らしをしている人間がまだこの世にいるという事実に歯痒い気持ちが芽生える。


黙々と歩いていくユースティス。

広々とした道路をまるで一人で歩いているかのように辺りの静けさに身を委ね、ポケットに手を入れながら堂々と進んでいく。


どうやらこの付近では街を歩く者が少ないようだ。

それも当然である。


何しろ街の中心とは違い、ここは商人達の姿が見えない。


商売をするのにうってつけの絶好の場所であるはずなのに、商品を売る商人達の姿が一人も見えない。


奇妙な街の風景に慣れないでいると、ユースティスの目の前から自らと同じ執事のような服装を見に纏った老人が靴の反骨音を響かせながら歩いて来た。


頭にはハット帽子を被り、片目に掛かった眼鏡を装飾品として飾った老人。


右手には杖を持ち、歩行を支えている。

左手には骨董品を思わせる金色に塗り固められた時計を見せびらかすかの如く持ち、刻々と刻まれる時計をチラチラと確認しながらユースティスに近付いてくる。


二人の距離が近付いてーーーやがて交わる。

互いに横目で確認しながら歩くと、そのまま無言で去っていく。


ただならぬ雰囲気を感じ取ったユースティスが後ろに注意しながら歩き続けようとした。


しかしーーー


「もし、少し宜しいかな?」


その声は背後から聞こえて来て、ユースティスは不意に足を止めて立ち止まった。


振り向かずにそのまま答える。


「なんだ?」

「いや何、たまたま通りかかった老人の話だからね。忠告までに聞いておいて欲しいと思って呼び止めたんだよ」

「……」


老人の妙な物言いにユースティスは顔を歪ませる。


「何が言いたい?」


探るように聴き込むと、老人はゆっくり振り返って言った。


「君は一体、何を知ろうとしている?」


そう低く唸るような声でユースティスを威圧してくる。


無表情の紳士が体を翻して老人を見据えた。


老人の鋭く突き刺すような冷たい視線が眼鏡の奥からこちらまで刺突が如く届いてくる。


射抜くような威圧的な視線を向けられたユースティスは、さしも動じず無表情で老人を睨み返す。


そこに一切の感情を捨て去りて。


「残念だが、俺は観光に来ただけのただの客だ。貴方の思ってるような人間ではない」


ユースティスはここに来て嘘をついてみせた。

明らかな警戒態勢の老人を前に発言する。


並大抵の人間が出来る芸当じゃない。

疑っている相手にボロが出て射抜かれれば負けは必須。


しかし、敢えてユースティスは嘘をついてみせた。

一体どんな心理があって嘘をついたのか。

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