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説教を食らうアリアはベッドに正座をしてユースティスの言葉を受ける。


ユースティスに説教を食らうことはアリアのこれまでの人生の中で度々あった。


彼の説教は必ずアリアが怠惰になる時に発しているものだった。


回数を重ねる度に彼の小言は饒舌を増していく。

くどくどくどぐどと、耳にタコが出来てしまうのではと思いながら聞き流していた。


そうして、もう何度も味わったことのある陰湿にも似た小言を受け止め、心身共に疲れ果てた状態の不安定を身に受けていると、ふとユースティスが説教を止めて彼女を見つめた。


「ーーーそう言えば、ロンドという男はどこに行った?先程から全然見当たらないが……」


彼は辺りを確認する様に見渡しながら言った。

体を一周させてみるが、確かにそこにはロンドの姿はなかった。


その事態を不思議に思っていたユースティスが二人に問いかけたのだ。


「彼なら、一人で違う宿に向かいましたよ」

「何だと?」

「そう、だね……」


アリアは少し顔を暗くして答えた。

途切れ途切れの言葉に反応したユースティスが眉を動かした。


そして、彼女を見つめる様に眺める。

彼がアリアの表情の暗さに気付くことはない。


「ーーー一緒にとは言わなかったのか?」


不意に漏らしたユースティスの言葉に体を反射の形で動かしたアリアが肩をビクッとさせて縮こまった。


「何だが……、神妙な顔つきだったから声を掛けづらかったの……」

「えぇ……あの表情を私達は何度も見て来ましたよ」


アリアはロンドと別れた時の情景を思い出す。

ユースティスと連絡を取った後、アリア達とは反対方向に去っていく彼の後ろ姿が今も目に焼き付いていた。


そんな彼女の言葉を受けて、ユースティスは唸った。


「何かしら思うところがあったのだろう……。人は時として不意に思い出す記憶の断片から悲観の時が来るのだ……。今は目を瞑ってやれ」


そう言った彼の表情は少しだけ雲行きの怪しいものへとなっていた。


彼にも思うところがあったのか。

ロンドの行動は仕方ないと割り切る。


本当なら全員で一緒の宿に泊まることで、明日以降の作戦を練ろうと考えていたのだが……


(まぁ……、そんなことはどうでもいい)


同じ宿にいなくとも対策を練る為の作戦などいつでも出来る。


ユースティスはそう心に思って、ふとアリアを見た。

凛とした姿が虚栄心を張っている。


心身は疲れているはずなのに、そこに気怠げな彼女は存在しなかった。


じっと……彼女を射貫かんとする瞳がアリアを見据える。


だが、ユースティスはある違和感を覚えて彼女の顔に入り浸った。


真剣に見つめる眼差しを受けている彼女の目の下にクマが出来ているのをユースティスは見逃さなかった。


彼女の顔を真剣に見つめ、座り込んでいる椅子に軋みを入れながらアリアに言う。


「なら、今日のところはもう寝た方がいいだろう。疲れも溜まっている頃合だろうからな」


ユースティスは促す様に言う。

今のうちに体を休めておかなければ、次いつ体を休めるか分かったものじゃない。


故にユースティスは彼女に言う。

その言葉を受けて、アリアは彼の瞳を見た。


何か物言いたげな目でこちらを見つめている。

長年一緒にいるアリアは彼が何を言いたいのかをすぐさま察知することが出来た。


「うん、そうする」


そう言ってアリアは徐にベッドに仰向けの状態で寝転がり、すっと目を閉じた。


目を閉じた瞬間、今まで張り詰めていた緊張感が一気に解けていき、体の全体重がずっしりとベッドに軋んだ。


解き放たれた開放感が襲い、急速にアリアの眠りを促していく。


脳の一つ一つの機能が停止していくかのような感覚に襲われ、アリアはそのまま数秒と経たないうちに深い眠りについた。


その直前、意識が途切れていく中でーーー


「明日は聞き込みをする」


というユースティスの言葉を最後にアリアの意識は途絶えた。


眠りについたアリアから小さな吐息が漏れる。

微かに聞こえてくる寝息がアルマリアとユースティスの二人の耳に届く。


彼女が眠りについたのを確認したユースティスは、机の上に置かれたカードに視線を戻してそれを見つめた。


乱れていた磁気が回復し、綺麗な黒の一本線が直進する。


そして、調律を終えたユースティスが武器の新調を確かめるために言葉を紡ぐ。


「エラーコード……」


続いて詠唱を綴り、武器を出現させる。


「私怨……」


詠唱を終えると、輝きを放った数秒後、ユースティスの手には真剣が握られていた。


美しく輝く刀身が灯りの灯った光を反射して煌びやかな銀色を発光させる。


手に収まった真剣を見つめ、


「問題無さそうだな……」


と、武器の具合を確認して言った。


「毎度毎度確認しないと気が済まないんですか?」


いつも通りの真剣を見つめ余韻に浸っていたその時ーーー


その様子を傍目で見ていたアルマリアが彼の方を見つめながら言った。


その目は何か言いたげな目でこちらを見つめている。


「何度言わせる気だ?調律は大切だ。いざという時お嬢様が守れなくてもいいのか?」

「それは困ります。お嬢様を守れないメイドはメイド失格ですからね」

「なら、定期的にメンテナンスをしろ。後悔したくないならな……」


ユースティスの小言が今回は痛いほど突き刺さる。

いつもは煩わしく鬱陶しかった彼の言葉にも強みに感じる時は幾度かあった。


今回もそうだ。

彼の言葉は……正しい。

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