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間違ったことを言わないわけじゃない。

ただ、正しいことしか言わないだけ。


たまに間違えることもある。

だけど、それは本当に一部のミステイクであって、断片的なミステイクでしかない。


彼の言葉を一番に理解しているアルマリアは、自直にユースティスの言葉を信じる。


素直に彼の言うことに自分自身従うことを決意する。

意を決して行動に移す。


「ベストコード」


いつものように裾に備えられていた白銀に彩られたカードを取り出し唱える。


カードを手に持つと、続けて詠唱をする。


「私怨……」


唱え終えると、唐突にカードが光り輝く。

迸る閃光が部屋を包み込む。


やがて光が収束していくと、その手には白銀に色艷られた煌びやかな銃が姿を現した。


「ふっ、俺の言う通りにしたか」


アルマリアが武器を取り出したのを見てユースティスは鼻で笑う。


よほど自分の言う通りにしたことが面白かったのだろうか。


「そのムカつく口を閉じて下さい」


笑っているのを不服に思ったアルマリアがユースティスにピシャッと言った。


「すまないな、お前の素直じゃない態度が面白かっただけだ」

「余計に勘に触る悪い言い方ですね……」

「まぁ、そう怒るな」


宥めるようにユースティスは落ち着かせ、ふくれっ面の彼女を見つめる。


どうやら相当いじけているようだ。

ユースティスに指摘されることを嫌うアルマリアによく現れる特徴だ。


相変わらず頬を膨らませているアルマリアが、自身の手にある銃に目を向け感触を確かめる。


銃の側面を手で撫でるかのような仕草でゆっくりと動かし手前に引いていく。


ほつれやヒビ割れが無いかを手探りと目視で確認する。


丁寧に手を動かし全体の探りを入れていった。

通常のハンドガンよりも少しだけ長く出来ている銃を手に、アルマリアは目を瞑り全神経を手の先に集中させる。


「……」


ずっと動かしていく手が銃の周りを一周したところで、アルマリアが瞑っていた目を開けてふっと息を吐いた。


張り詰めていた緊張感が一気に解けていき、深い呼吸を可能にする。


「終わったようだな」


終始その様子を見守っていたユースティスが、手の動きが止んだのを見て声を出す。


「ええ……、体の体力が奪われるからあまりやりたくないんですがね。あなたに言われたからではありませんよ?仕方なくですよ仕方なく」

「分かっている。だが、元より定期的に行っていれば、体力が万全の状態で行えていたはずだ。そうなる前にやることにこそ意味があるということを覚えておけ。でなければ、今のお前のように疲れが更に増すことになる」

「……」


彼女は少し眉を窄めて眉間にシワを作る。

ユースティスの小言が再びアルマリアに向く。


几帳面な性格の彼にとって彼とは真反対の性格にあるアルマリアとは対照的な差が存在していた。


きっちりとしたことを好むユースティス。

マイペースで自由気ままなことを好むアルマリア。


二人の性格は相対しているが、今回のことに関して言えば、互いに嫌悪感を抱くまでには至らなかった。


いつもなら正しいことをやれないアルマリアに注意をすることから始まるのだがーーー


大抵は喧嘩に始まり喧嘩に終わる。

お互い言いたいことをぶつけて討論して、そして互いに言いたいことがなくなれば終息する。


そういったことが彼らにとっては日常茶飯事だった。

しかし今日はあまり大事にならなくて済んだ。


アルマリアに至っても、今日はユースティスに物事の動作に対しての正しさについて、説教の如く延々と言われるということはなかった。


アルマリアは淡々としている性格故か、細かくやるということを疎かにしてしまう癖はあった。


その癖が一度身に付いてしまえば、中々離れることはない。


怠惰にも等しい彼女の性格。

だが、さしもその怠惰が起こした事象をアルマリアは知っていた。


今回に関していえば完全に自分に非がある。


何度か怠惰が影響で起こしてしまった事態を既に経験していたからだ。


いざという時に人を救えないようでは、この先やっていけないということをアルマリアは知っていた。


過去に怠惰が原因で数多くの仲間が自分達の前から姿を消していった。


その光景を目の前で見ているからこそ、彼女は武器の大切さが身に染みて分かっている。


武器が無ければ、人は無人とは戦うことが出来ない。

非力な人間の力ではやつらに対抗する術もなく敵うはずもない。


圧倒的な防護力を誇る無人に通ずる攻撃は、人の手に貸した武器の力であると。


彼女は知っている。

知っていることはより探究心を深めて学ばなければならない。


アルマリアは自らの手に収まっている銃を弄りながら思いふける。


この銃で一体どれ程の無人を屠ってきたのだろうか。

この銃を持ちながら、一体どれだけの人間が目の前で失われてきたのだろうか。


考えたくても考えたくないと頭が拒否する。

失われていく情景が頭に浮かんでくるが、すぐさま頭を振ってその嫌な記憶を消し去ろうとする。


ぐらんと脳が揺れ、視界が若干揺さ振られる。


「何をしてるんだ……」


いきなり頭を振って目をフラフラとさせているアルマリアの様子を訝しげな表情でユースティスが見つめる。


ユースティスの顔は呆れ返っているように見えた。


「何でも、ないです……」


彼の視線から逃れるようにしてアルマリアはそっぽを向いて顔を逸らす。


「ふぅ……」


やれやれと溜め息を吐いてユースティスは、手に持っていた真剣をポケットから取り出した布で磨いていく。


刀身に付いた汚れを取り払う為に挟むように包んで上下に動かして汚れを拭き取る。


煌びやかに映えた刀身に自分が写り込むのをユースティスは見た。


その表情は何とも言い難い顔になっていた。

焦燥と苦悶が入り混じった顔を見つめ、ユースティスは刀を持つ手を動かす。


その度に音が部屋に木霊する。

静かな部屋に響き渡る音霊を耳に残して、二人はしばし無言になる。

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