遅れた粉袋
東の砦へ届くはずの粉袋が、予定より三日遅れた。隊長レシュは水車の故障を疑ったが、荷運びのカルからは北の橋の通行制限が原因だと知らせが来た。川を回り道する荷車が増え、宿場の馬を借りられなくなっている。
炊事係はパンの数を減らすかと尋ねた。レシュは兵の取り分だけを先に削ることを禁じた。村の避難者も砦で食べる。必要な食料を数え、保存の利く豆と根菜で献立を組み替えることになった。
村から来た老婆は、自分たちが穀物を持参すると申し出た。レシュは礼を言いつつ、家の種麦までは運ばなくてよいと答えた。明日の暮らしを削って今夜の安心を買うのは、誰にとっても苦い選択だった。
昼過ぎ、ロアは倉庫の隅で湿った粉袋を見つけた。捨てるしかないかと思ったが、炊事係は袋の外側だけ濡れていると見て、開けて状態を確かめた。使える粉と傷んだ粉を分ければ、一日分ほどのパンが焼ける。
夕方、待っていた荷車が砦に着いた。御者は泥で汚れ、馬は息を切らしていた。レシュは荷の数より先に、御者へ温かい湯を出させた。
荷車の御者は、迂回路の宿で馬の餌が高くなったと愚痴をこぼした。レシュは相場を下げられないが、砦の厩で乾草を分けることはできると答えた。御者は礼を言い、次に通る仲間へ悪路を知らせると約束した。粉袋を運ぶのは荷車一台ではない。遠い宿場で書かれる小さな注意書きも、砦の食事へつながっている。
荷車の車軸が傷んでいると分かり、ロアが修理を手伝った。粉袋は倉庫へ積まれたが、御者は翌朝まで砦に泊まることになった。道が長くなった日には、人も馬も休む場所を必要とする。




