砕けた鎧片
森の浅い沢で見つかった鎧片は、魔族の軍が使うものだった。斥候ネインは泥から引き上げた金属に、東砦の古い印を見つけた。誰かが戦ったのかと考えたが、砦の兵の欠員はない。十年以上前の装備が土から現れた可能性もある。
鍛冶師ゼマへ送ると、返事は予想外だった。金属は古い型だが、割れ目は新しい。大きな力で折られたように見えるとある。ただし自然の落石でも割れる厚さだという。
ロアは沢へ向かう許可を願い出た。レシュは彼だけを送り出さず、年長のベドと村の猟師を同行させた。川底には雨で運ばれた小石が積もり、足を入れると膝まで沈む場所があった。鎧片だけを見つめていれば転んでいた。
三人は上流に小さな崖崩れを見つけた。土の中から古い胸当ての残りが突き出している。戦いの跡か、捨てられた装備が押しつぶされたのか、まだ分からない。ロアは残りの金属を外そうとしたが、地盤が崩れかけており、ベドに止められた。
帰り道、猟師はこの辺りで昔、山火事があったと話した。兵が避難した際、使えない鎧を捨てたかもしれない。ロアは人間の剣のせいだと早合点した自分に気づき、黙って頷いた。
鎧片を持ち帰ったロアは、表面に残る小さな花の模様を見つけた。城の工房の古い印ではないかと考え、ゼマへ写しを送った。返ってきた手紙には、昔の兵舎の鍛冶師が祝い事のときだけ打った飾りだとあった。鎧の持ち主にも家族や出発の日があったのだろう。ロアはそれを聞いて、ただの武具として箱へ投げ入れるのをやめ、布の上へ丁寧に置いた。
砦へ戻った報告には、鎧片の場所と崖崩れの危険を並べた。誰の剣が砕いたかより、明日そこへ行く者が足を滑らせないことの方が先だった。




