↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者は何度でも蘇る。魔王は玉座の間から出られない。  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
92/228

雨のない雷

東の森から雷鳴が聞こえたのは、空に雲の少ない日だった。鳩番テオが見張り台へ登ると、遠い石壁の向こうで青白い光が一度だけ跳ねた。続けて低い音が来たが、雨粒は落ちなかった。

隊長レシュは雷だと決めず、見た色と音の間隔を尋ねた。兵ベドは人間の術かもしれないと言い、ロアは石壁に落ちたのだろうと考えた。どちらも確かなことではない。

斥候ネインは森の内側を調べに出た。焦げた木は見つからず、獣が逃げた痕も薄い。石壁の手前には新しい人間の靴跡がいくつかあったが、四人組のものとは限らない。彼は足跡の幅だけを写し取った。

砦の台所では、雷鳴に驚いた犬が鍋を倒していた。炊事係は大きなため息をつき、こぼれた粥を片付けた。兵たちは空の光より今夜の食事が減ったことに困り、村から余った豆を借りる相談を始めた。

夕刻、鳩が一羽戻らなかった。テオは空を眺め、風の向きと雲の高さを帳面へ書いた。鳥が帰らない日はこれまでにもあったが、今日のことを明日の誰かが調べるなら、細かい記録が必要だと思った。

青い光を見た村の老人は、昔も晴れた空で雷を聞いたと話した。何十年も前のことで、同じ場所だったかは覚えていない。テオは話を途中で遮らず、日付の代わりに当時の作物や川の様子を尋ねた。老人はその年に梨がよく実ったと答えた。記憶を確かめるために作物の記録を見れば、季節だけは分かるかもしれない。砦の古い帳面を探すことになった。

遅れて戻った鳩は、翌朝、鳩舎の屋根で眠っていた。脚の筒は空だった。テオは笑って餌を置いたが、石壁の光についての問いはそのまま残った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。