風向きの争い
東の砦の周囲で、煙が村側へ流れる日が増えた。隊長レシュが焚き火の場所を変えようとすると、炊事係は水汲みの距離が伸びると反対した。見張りの兵は煙が目印になると訴えたが、冬の食事を冷たいまま出すわけにもいかない。
レシュは砦の庭へ三人を集め、風向きに合わせた火の位置を試した。朝と昼で風が逆になる日があり、固定したかまど一つでは足りないと分かった。石を組む者、薪を運ぶ者、鍋を動かす者の仕事を分けることになった。
兵ロアは炊事係へ、なぜもっと早く場所を変えなかったのか尋ねた。炊事係は笑って古い井戸を指した。以前は井戸のそばが一番安全で、火事にもすぐ水を掛けられた。守りたいものが違えば、一番よい場所も変わる。
午後、村の側から一筋の灰色の煙が上がった。兵たちは身構えたが、畑で病んだ枝を焼いただけだった。誰の煙か確かめずに鐘を鳴らしていれば、避難の準備で村は混乱していただろう。
レシュは村長に、畑で火を使う日は砦へ知らせてほしいと頼んだ。代わりに砦も炊事の火を大きくするとき知らせる約束をした。警戒する者と暮らす者が、同じ空の煙を見て違う意味を考えていた。
炊事係は古いかまどを壊さず、風の弱い日に使う予備として残した。レシュは薪を分散すると管理が難しくなると心配したが、炊事係は火種を分けておけば、一方が濡れても食事を作れると答えた。兵が守る場所を増やすなら、鍋を守る工夫も要る。ロアは薪置き場へ番号をつけ、運ぶ道を覚えた。木屑のついた手で槍に触れないよう、井戸で洗ってから夜番についた。
夜半、風が北へ変わった。新しいかまどの一つだけに火が残り、炊事係は湿った薪を屋根の下へ移した。敵が見えない夜ほど、火を消さぬ工夫が要った。




