白い紐の結び目
墓地の門に結ばれていた白い紐について、イセラは城下の古道具屋を訪ねた。店主は布の色だけではどこで買ったか分からないと言い、代わりに結び方を教えてくれた。荷を縛る結び、門を飾る結び、子供が遊びで作る結び。似た白い紐でも、用途はさまざまだった。
キルの証言では、紐は二重に輪を作っていた。店主はそれを聞いて、昔の墓参りで使う形に似ていると話した。ただし最近は誰も使わないという。
イセラは墓守の老人に尋ねた。老人は紐を見た覚えがなく、昔の墓参りの習慣も家ごとに違うと答えた。彼の妻が生きていれば詳しかったかもしれない。イセラは名前を尋ね、城の古い祭礼帳へ書き足した。
書庫で学匠モールは、門を飾る古い習慣について資料を見せた。白い輪は死者が迷わぬために結ぶ地方もあれば、帰って来てほしくない者のために結ぶ地方もある。意味が反対なのに形だけ似ることがある。
イセラは白い紐を勇者と結びつけるのをやめた。分からないことをいくつも重ねれば、確かめた事実まで濁る。代わりに昔の習慣を知らない若い書記たちへ、墓地の記録の読み方を教えることにした。
古道具屋の店主は、紐の見本を小箱から取り出した。洗えば同じ白でも、古いものは光の当たり方が違う。イセラはキルの見た紐を再現しようとしたが、結び目の正確な向きは覚えていないという。記憶の穴を埋めようと無理に答えを求めれば、本人も想像を事実だと思い込んでしまう。店主は使わなかった見本を元の箱へ収めた。
夕方、墓地の門はいつもどおり閉められた。風に揺れるものはなかったが、石畳には新しい花が増えていた。イセラは門を振り返らず帰った。




