三人の立会人
書記官イセラは三度目の討伐の立会人を集めた。医官セフィ、護衛長ダルム、そして当時の衛兵キル。キルは今では城外の畑に戻り、腰の曲がった父親と麦を育てている。
三人へ同じ問いを別々に投げた。遺体を見た時間、剣の置かれた場所、傷の形、埋葬までの経路。答えは細かな部分で違った。セフィは遺体の冷たさを覚え、ダルムは扉の位置を覚え、キルは棺の重さを覚えていた。
「違うから嘘なのではありません」
イセラは助手へそう話した。見た場所が違えば、記憶に残るものも違う。重要なのは三人が共通して確認した事実である。首が身体から離れていたこと。呼吸がなかったこと。棺の蓋が閉じられたこと。
キルは訊かれていないことを一つ話した。埋葬の翌朝、墓地の門に白い紐が結ばれていたという。子供の悪戯だと思って取ってしまったが、今でも気になっているらしい。
ダルムはそんな紐を知らなかった。セフィも見ていない。イセラは古い帳簿を開いたが、門の紐について書かれた記録はなかった。
聞き取りが終わると、キルは畑へ帰るために席を立った。勇者が再び現れたかもしれないと知り、顔は強ばっていた。それでも父の薬を持ち帰ることを忘れなかった。
キルは別れ際、息子が今年から畑を手伝うと話した。兵だった頃は腰の刀ばかり気にしていたが、今は鍬の柄が折れないか心配するという。ダルムは元気でいるよう伝え、帰りの荷車へ積む薬草を一袋持たせた。キルは恐縮したが、セフィは父親の咳に使う量を丁寧に説明した。三度目の夜を知る者にも、今日守るべき暮らしがある。
イセラは三人の証言を別々の封書にした。誰かの記憶を一つに合わせてしまえば、あとから確かめる手がかりまで失われる。封には同じ日付を押した。




