学校の屋根
秋の雨で学校の屋根から水が漏れ、教師サラは教室の机を片側へ寄せた。子供たちは面白がったが、濡れた床で滑った子が出ると笑い声は止んだ。町の大工は北の橋を直しており、すぐ呼べる者はいない。
サラは年長の生徒に、どこから雨が落ちるか印をつけさせた。屋根に登らせるのではない。床へ紙を置き、濡れた形を写すだけだ。子供たちは水滴が広がるのを見て、穴が一つとは限らないことに気づいた。
執政官メルドは仕事の帰りに学校へ寄り、妻の描いた印を確かめた。臨時の修理には城の職人を一人借りられるが、医務室の棚も直している最中だという。サラは今日中にすべて直せとは言わず、子供たちが濡れずに授業を受けられる場所を先に作ろうと提案した。
翌朝、工房の弟子ニコが古い金具を運んできた。大工でなくても樋の留め具なら直せる。雨が上がった隙に屋根を調べると、瓦の一枚が風で浮き、そこから水が入り込んでいた。
子供たちは教室の端で、雨を集めた桶の水を庭の木へ運んだ。誰かが『雨のおかげで花が元気になる』と言った。サラは屋根の修理を終えたニコに温かい茶を渡し、子供たちへ道具を片付けるよう頼んだ。
修理の合間、ニコは屋根から城下の景色を眺めた。畑の先に北の道が見え、荷車が一台ゆっくり進んでいる。普段は工房に籠もり、遠くの道を見たことが少なかった。サラは下から危ないから立つなと声を上げ、ニコは慌てて膝をついた。見晴らしのよい場所ほど足元に気をつけることを、子供たちより先に教わってしまった。
日が暮れると再び雨が降った。窓際に並べた紙は乾いたままだった。サラはそれを確かめてから、家へ帰った。




