守る順番
護衛長ダルムは謁見の間の警護を変える案を持ち込んだ。玉座への通路を塞ぐ厚い扉をもう一枚置けば、侵入者を遅らせられる。しかしその扉は給仕や医官の移動も妨げる。夜中に急病人が出たとき、開ける鍵を持つ者がいなければ命に関わる。
執政官メルドは扉の図面を見て、閉める順番より開ける権限を先に決めるべきだと言った。城の鍵を軍の長だけが持つなら、火事のとき誰も逃げられない。
二人は魔王ヴァルゼンの前で意見を交わした。ヴァルゼンは扉を増やす決定を急がず、廊下を使う者の名前を調べるよう命じた。厨房の女、掃除係、医官、書記、庭師。彼らの仕事を知らずに城の道を狭めることはできない。
翌日、ダルムは掃除係の少年について廊下を歩いた。少年は重い水桶を両手で運び、扉を開けるとき肘を使う。新しい扉なら彼は毎朝誰かを呼ばなければならないと分かった。
昼には医官セフィが急患を運ぶための担架を持って来た。担架は曲がり角で大きく回さなければ通らない。ダルムは図面にいくつも印を付け、扉を増やす案を一度引っ込めた。
通路を使う者の聞き取りで、厨房の女は毎朝六回その扉を通ると答えた。掃除係は十回、医官は急患の有無で変わる。ダルムが数を記すと、いちばん頻繁に動くのは警護の兵ではなかった。新しい扉を閉めれば、鍵を探す時間が積み重なる。メルドは数字を見て、兵の配置を守りやすくするなら通路の幅も同じだけ大切だと理解した。
夜、ヴァルゼンはその判断を聞き、ダルムへ礼を言った。自分を守るために城に暮らす者の通路を奪うなら、守るものが逆になってしまう。扉は開いたまま、見張りの位置だけが少し変わった。




