焼け跡の剣
護衛長ダルムは三度目に勇者と戦った階段へ、古い刃の写しを持ってきた。焼け跡のある剣の柄は、今も別の場所で見られている。過去の戦いを覚えている兵は少なくなり、新しい兵たちは訓練場で教えられた形しか知らない。
ダルムは階段の途中で剣を構え、兵たちに自分の動きを見せた。三年前の男は狭い場所で身体をひねり、盾の脇へ刃を通した。正面の力比べだけでは防げない動きだった。
若い衛兵は同じ動きを試したが、鎧の裾が石段へ引っ掛かった。ダルムは笑わず、裾の留め方を直させた。負けた理由を力の差にしてしまえば、直せる欠点まで見落とす。
廊下の端では掃除係の少年が仕事を止めて見ていた。訓練が終わると、石段についた古い傷を指した。そこだけは何度磨いても黒ずみが消えないという。ダルムは傷の由来を短く説明した。
「あの人は今も来るのですか」
「分からない。だからここを使う者が転ばぬようにする」
ダルムは少年へ、訓練の間は遠回りの廊下を使うよう頼んだ。武器を振るう者ばかりが、城の道を使うわけではない。
訓練に参加した古参兵の一人は、三年前の戦いで盾の縁を割られた経験を話した。剣の男の腕が見えたときには衝撃が届いていたという。若い兵が怪物のようだと呟くと、ダルムは相手の呼び名では傷の向きは分からないと答えた。古参兵は割れた盾を捨てずに持っていた。翌日、それを訓練場へ運んで角度を確かめることになった。
夕方、彼は階段の角へ薄い木板を取り付けた。刃を受け止めるためではなく、足元の欠けを隠して転倒を防ぐためのものだった。三度勇者を殺した記憶があっても、目の前の兵の足を守る仕事は残っていた。




