城へ届く砂
城門の石段に見慣れない赤い砂が付いていた。門番ハルドは靴で踏んだ跡を確かめ、人間の行商が運んだ荷袋の底からこぼれたものと気づいた。砂は東の石壁近くで採れる土と似ていた。
城へ入った行商人は、あの一帯を通ってきたと言った。ただし四人組については知らず、最近は街道で剣を持つ者を何度も見ると話した。ハルドは顔の傷を確かめようとしてやめた。目撃した相手が本当に同じ男とは限らない。
書記官イセラは砂を少量受け取り、学匠モールへ送った。土の粒は角ばっており、古い石壁の表面から落ちたものとも考えられる。モールは顕微用の水晶を使ったが、珍しい鉱石は見つからなかった。
その日の午後、門の外で荷袋が破れた。小麦が石畳へ散り、子供たちが拾おうと集まった。ハルドは布を広げて麦を集め、砂が混ざった分は家畜の餌にも使わないよう分けた。
「せっかくの麦なのに」
弟が惜しむと、ハルドは何を口にするか確かめるのも門の仕事だと教えた。城の人々は多くの食べ物を、遠くから来る者に頼っている。
赤砂を持って来た行商人は、石壁の近くで誰かが焚き火をしていたとも話した。火の跡は古く、持ち主を確かめられない。ハルドは誰かに詳しく知らせるべきかと迷ったが、イセラは記録しておこうと言った。大きな知らせを作るために小さな証言を膨らませる必要はない。行商人には次の便で、あの場所の水場が使えるか聞いてみることになった。
夕方、イセラは砂の報告を謁見の間へ届けた。ヴァルゼンは石壁に近づいた者が増えているのかと尋ねたが、確かな数は出ていない。報告書に書かれたのは、砂の色と粒の形だけだった。魔王は机に少量の砂を残し、誰にも見えない境界の向こうを思った。




