火を使わない道
東砦の隊長レシュは、森で罠が見つかった報告を受け、夜間の巡回を一つ減らした。兵たちには不満があった。見張りが減れば四人組を見失うかもしれない。しかし暗い獣道で足を折れば、砦を守る手が減る。
門番ユリは火のない道を歩くため、小さな陶片を白石の脇へ置く案を出した。月明かりを反射する釉薬なら、灯を掲げずとも足場が見えるかもしれない。だが曇った夜には光らず、土に沈めば役に立たない。
兵ロアとベドは陶片を持って森の入口へ行き、薄暮に確かめた。枝が揺れると見える位置が変わる。どの道でも使える便利な印ではなかった。結局、危険な曲がり角だけに置くことにした。
その途中で、二人は人間の老人に会った。老人は川向こうへ嫁いだ娘を訪ねる途中で、日暮れまでに宿へ着きたいと急いでいた。ベドは境界まで同行し、そこから先は自分たちが行けないと説明した。
老人は不思議そうに彼らの脚を見た。嘘をついているとは思わなかったが、なぜここから先へ一歩も出られないのか理解できない様子だった。
砦へ戻ったロアは、危険のない通行人まで勇者と同じ道へ入れないようにする案を退けた。道を使う者は一組だけではない。レシュはその判断を認め、見張りの記録へ老人の通行を残した。
老人が道を去ったあと、ロアは彼の持っていた杖の先を思い出した。濡れた土に深い跡を残しており、急な坂なら滑るだろう。ベドは村の木工師へ頼んで、杖の先に巻く丈夫な布を作ってもらった。急ぎの荷に同封すれば、宿場へ着くころ老人の手に渡るかもしれない。彼らは敵を待つ砦にいながら、知らない旅人の杖のことも話し合っていた。
夜、ユリは陶片を洗って箱へ戻した。使える道具も、使う場所を誤れば目印にならない。彼女は鐘楼の梯子を下り、門に掛けた古い鍵を確かめた。




