痕跡の値段
鍛冶師ゼマは森から届いた鉄輪を火にかざした。金属の縁には、城の鍛冶場では使わない薄い焼き模様が残っている。弟子ニコは人間の武器だと決めつけたが、ゼマは釘一本にだって異国の技法はあると戒めた。
調べてみると、鉄輪は狩猟罠としてはずいぶん強く作られていた。狼の幼獣なら傷つけるだけでも、成獣なら足を折るかもしれない。ゼマはその頑丈さを褒める気になれなかった。
そこへ羊毛商人オードが立ち寄った。鉄輪を見て、北の宿場で売られていたものに似ていると言う。遠方から流れ着いた商人が、いくつかまとめて運んでいたらしい。ただし売り手がどこで作ったかは知らない。
ニコは値段を尋ねた。オードは高かったとだけ答え、詳しい額を言わなかった。誰が買ったか確かめても、同じ金具を別の者が作れるなら証拠にはならないと考えたのだ。
ゼマは鉄輪の折れ方を写し取り、森の兵へ返書を送った。使い方を教えるつもりはない。似た罠があれば遠くから見分けられるよう、形だけ知らせた。
午後、ニコは工房の戸口で犬が脚を引きずっているのを見た。罠の傷ではなく、爪を石に引っかけたらしい。彼は湯で汚れを落とし、布を巻いた。鉄の形を調べているうちに、傷つく側の痛みを忘れそうになったからだった。
オードは鉄輪を手に持ち、北の市で売られていた物と一つだけ違うところがあると言った。留め具の向きが逆なのだ。狩猟の道具は地方によって小さく変わる。ニコは同じものと決めつけて写した線を消し、もう一度寸法を取り直した。ゼマは書き損じた紙も捨てるなと言った。なぜ間違えたかを知っていれば、次に似た品が来ても見分けられる。
夕方、ゼマは鉄輪を箱へ封じ、誰のものか分からぬ品だと札をつけた。知らないことを知っているふりで埋めるのは、鍛冶の失敗より厄介だった。




