赤目狼の子
東の森の罠に掛かったのは、大きな魔獣ではなく赤目狼の幼獣だった。猟師ファロは獣道で鳴き声を聞き、近づいたが、親狼が近くにいる可能性を考えて足を止めた。幼獣は細い鉄輪に脚を取られ、土を掘り返している。
罠は森の猟師が使うものと違った。紐は新しく、地面には人間の靴跡があった。ファロは四人組の誰かが仕掛けたと考えかけたが、街道を通る猟師は他にもいる。持ち主の名も目的も分からない。
同行した斥候ネインは、長い枝の先へ布を巻き、狼の頭をそっと押さえた。ファロが輪を緩めると、幼獣は鳴き声を上げて茂みへ飛び込んだ。助けたつもりでも、次に会えば牙を向けてくるだろう。それでよかった。
地面に残った鉄輪を二人は回収した。村の子が踏めば指を切りかねない。ネインは鉄の鍛え方を見て、城の工房へ持ち帰って調べてもらおうと言った。
森から戻る途中、遠くで狼の吠え声が聞こえた。以前より数が少ないのは確かだったが、どこへ移ったのかは分からない。ファロは罠の場所を地図へ記し、狩りに来る村人へ注意するよう伝えた。
幼獣が逃げ込んだ穴のそばには、母狼の足跡があった。ファロは子が生き延びる確信は持てなかったが、群れのいる方へ戻れたことを願った。ネインは草に付いた小さな血の跡を見て、罠の輪の寸法を確かめ直した。村の猟師に似た道具を見たことがないか訊ねる必要がある。森の獣と暮らす人々の事情は、砦の兵だけでは分からないからだ。
夜、東砦の兵ロアは鉄輪を見て顔をしかめた。狼が怖いから罠を作ったのか、獣皮が欲しくて作ったのか。ネインはどちらも可能だと答え、明朝は別の道を調べようと告げた。




