橋の両側
橋の半ばにある石の継ぎ目は、魔族の大工が越えられない場所だった。人間の若い職人フィンは、その継ぎ目の両側へ同じ幅の板を置こうとしていたが、片側で使った物差しが微妙に曲がっていることに気づかなかった。
魔族の職人ホルは向こうへ渡れず、継ぎ目のこちらから声をかけた。フィンは指摘されてむっとしたが、板を並べると隙間が指一本分広い。大工頭ブラムは二人へ、継ぎ目そのものを測る役を命じた。
ホルは物差しを手放し、フィンへ渡した。境界を越えられるのは道具だけだ。受け取ったフィンは向こう側の柱へ当て、数を読み上げる。数が違えば、ホルがこちらで計算し直す。何度か繰り返すうち、二人の声は自然に揃った。
昼食には互いの弁当を見せ合った。ホルの干し茸をフィンは苦いと言い、フィンの酢漬け野菜をホルは酸っぱいと言った。相手の味覚を笑っても、継ぎ目の寸法は変わらない。午後の作業では二人とも慎重になった。
通行人が橋の真ん中で立ち止まり、どうしてそこから先へ来ないのかと尋ねた。ホルは説明しようとして言葉を探した。生まれたときから足が止まる。そのことに理由を求めたことはあるが、納得できる答えはまだ得ていない。
夕刻、フィンはホルに向かって、完成した橋を最初から最後まで一緒に歩けないのは悔しいと言った。ホルは少し考え、道を行く人が自分たちの代わりに歩くだろうと答えた。フィンは翌朝渡る客の靴の数を数えてみると約束した。橋の通行料はまだ決まっていない。ブラムは二人の話を聞き、測り損ねた板がないかを最後に一度確かめた。
夕方、二人の削った板は寸分の狂いなく合わさった。ホルは橋のこちら側で、フィンは向こう側で、同じ継ぎ目を木槌で叩いた。橋が開いても二人が一緒に渡ることはない。それでも通る者の足元は、二人の手で支えられる。




